年間損失額は1兆2000億円! 放置される「男性の更年期障害」は社会問題 予防に役立つ食事とは?
「男たるもの」。令和の世においてこの言葉は禁句である。とりわけ健康維持の面では……。女性特有と思われがちな更年期障害だが男性にも訪れ、80代でも発症するというから要注意だ。ついに国も対策推進に乗り出した、男性更年期障害を防ぐすべを専門家が解説。【井出久満/順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科特任教授】
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出勤し、デスクに座る。パソコンに向かってマウスを動かす。仕事をしている、のかと思いきや、ネットサーフィンをしたり、ずっとネットゲームをしたりしているだけ……。あなたの職場にこのような中高年男性はいませんか? あるいは、もしかしたらあなた自身がそうかもしれません。
サボっている、怠けている、ラクして給料だけもらっている。前述のような中高年男性は、周囲からこう見られがちです。つまり、不真面目で、ダメな従業員だと烙印(らくいん)を押されてしまうわけです。
しかし、それは真面目か否かによるのではなく、「病気」がもたらしている可能性があるので注意が必要です。しっかり働きたいのにどうしても働けない病、男性更年期障害のせいかもしれないのです。
〈こう指摘するのは、順天堂大学大学院医学研究科泌尿器科特任教授の井手久満氏だ。
女性更年期障害と比べると、認知度に欠ける印象のある男性更年期障害だが、実は数百万人の患者がいるとされ、中高年男性の1割が更年期特有の症状を経験しているとの調査結果もある「メジャー」な病気だ。
そして、日本メンズヘルス医学会副理事長で、男性更年期障害の診断・治療のスペシャリストである井手氏は、医学的にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれる男性更年期障害について、「個人」の問題であると同時に「社会」の問題でもあると警鐘を鳴らす。〉
経済損失額は年間1兆円超
先ほど説明したような、何らかの健康上の問題を抱え、出勤はしていても著しく仕事のパフォーマンスが低下した状態であるプレゼンティーズム(疾病出勤)、さらにそれが進行して職場に来ることすらできなくなるアブセンティーズム(欠勤)が、近年社会問題化しています。なぜなら、これらによって社会全体の生産性の低下が懸念されているからです。そのプレゼンティーズム、アブセンティーズムの一つの要因となっているのが、男性更年期障害なのです。
〈実際、経済産業省は、男性の更年期症状による業務効率の低下や欠勤などの経済損失額は年間1兆2000億円にも上ると試算している。決して無視できない深刻な問題であることが分かる。
こうした事態を受けて、政府もついに腰を上げ、先月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」に初めて、男性更年期障害への対応を推進する旨が明記された。
このように、もはや「国家的問題」の一つとなっている男性更年期障害。井手氏が解説を続ける。〉
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