年間損失額は1兆2000億円! 放置される「男性の更年期障害」は社会問題 予防に役立つ食事とは?

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

病気にかかっていることを認めたがらない

 他方、すでにリタイアした60代半ば以降、70代、場合によっては80代の高齢男性でも更年期障害になる原因としては次のようなものが挙げられます。骨折や関節痛をきっかけに運動不足になってしまったり、また仕事などによるストレスはかからなくなっていたとしても、社会との関わりが希薄化して孤独や孤立に陥り、それがストレスになっていたりするケースです。

 男性更年期障害の厄介な点の一つは、自分が病気にかかっていることを認めたがらない人がいることです。頭痛や腹痛がひどければ病院に行くのが普通だと思います。ところが、なんだか仕事をする気が起きない、どうにも倦怠感が抜けないといった男性更年期障害の症状は、冒頭で触れたように「サボり」と混同されがちで、それを受け入れることは「男のプライド」として到底できない。あるいは、サボっていることを認めてしまうと企業戦士の一員からの脱落を余儀なくされるなどと考え、症状を放置してしまうケースがあるのです。

うつと更年期障害の見分け方

 しかし、男性更年期障害はれっきとした病気なのですから、他の病気と同様に病院で受診し、ホルモン補充や漢方薬の処方などの治療をしっかりと受けるべきです。

 受診する際の注意点は、精神科ではなく泌尿器科に行っていただきたいということです。男性更年期障害の症状はうつと似ているため精神科に行く人も多いのですが、テストステロンを産生するのは主に精巣であり、また性機能の衰えや頻尿の症状も出てくることから、窓口として適当なのは泌尿器科なのです。

 うつなのか、それとも男性更年期障害なのかを見極めるポイントの一つは「時間帯」です。うつの人だと朝起きられないケースが多いのに対し、男性更年期障害の場合、朝は割と元気があってもだんだんとエネルギーが枯渇していき、夕方ごろになるとドッと疲れが出て、働いたり、動いたりする気力がなくなる場合が目立ちます。

 また、男性更年期障害の診断で用いられる「AMSスコア」という17項目が記された質問票があります。インターネットで簡単に調べられますので、自分が男性更年期障害かもしれないと感じたら、このAMSスコアを参考にするのも一つの手です。

 なお、AMSスコアには、「神経質になった」「無気力」「自分のピークは過ぎたと感じる」「ひげの伸びが遅くなった」「朝立ちの回数が減少した」などの質問項目が記されています。

次ページ:ハードな運動はマイナス

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[3/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。