「大量の羊の死骸からサリンが…」「核兵器を本気で作ろうとしていた」 オウムがオーストラリアで進めていた驚愕の計画の全容

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発電器、小型掘削機までオーストラリアに持ち込もうと

 オーストラリア西海岸に位置するパース。世界各地から観光客が訪れる風光明媚なその街に降り立ち、オウムは核武装計画を進める。当時、オウムを捜査した元オーストラリア連邦警察長官ミック・パーマー氏に会うことができた。33年間、重大犯罪の捜査に関わってきた人物だ。

「彼らが税関で問題を起こしたと連絡がありました。その段階では彼らが何者なのか私たちは全く知りませんでした」

 と、パーマー氏。麻原がオーストラリア入国のために書いたというビザの申請書を見ると、入国の目的は観光と書かれていたが、

「彼らが持ち込んだ大量の品には普通ではない物がありました。ハンドソープと記されたラベルの付いた劇薬もあったのです」(同)

 さらに発電機などの機械類と、およそ2メートル四方、200キログラムもの小型掘削機を2台も持ち込もうとしていた。税関は薬品と掘削機を危険視して押収、危険物を持ち込んだ罪で約50万円(4800豪ドル)の罰金を科すが、麻原一行は入国を果たす。

2000万円かけて牧場に巨大な穴を掘り上げ……

 彼らは、小型飛行機2機をチャーターしてバンジャワンに向かう。パースから北東に700キロ、内陸部の小さな街だ。私も小型機に乗り込み、彼らと同じルートでバンジャワンに向かった。そこは東京都ほどの広さの巨大な牧場だった。

「ここは火星か?」と思わせるほど広大な大地は赤茶けていた。コバエが無数に飛び交っているのが難儀だった。出迎えてくれたのは、オウムから2400万円でこの牧場を買った牧場主のニール・ホワイト氏。オウムがここにいた痕跡は確かにあるという。そこまでは車で20分ほどかかる。

「確かだいたい直径3メートル、深さ1メートル位の大きな穴がここにあって、土の山はあそこにあったと思うよ」

 ハンドルを切りながらニール氏が話しかける。取材を進める中で、オウムは掘削機などをオーストラリアで新たに調達したことが判明した。その総額は2000万円。そこまでの執念で巨大な穴を掘り上げていたのだ。

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