「楽しくて気付いたら子どもが7人に」 熊本市・「やまなみこども園」が起こした四つの奇跡 一方、「補助金獲得のための保育園」が乱立する問題も
四つの奇跡
こうした実践の中で、「奇跡」と称されることがいくつも起きたやまなみこども園について、私は以下の四点を優れた特徴として指摘したい。
一つ目は、子どものネガティブな発達特性がほとんど見られなくなることだ。独自の保育によって子どもたちの間に個々の価値観を尊重して助け合う関係性ができるため、普通なら発達障害や知的障害と診断されるような子であっても、自然とみんなで支え合うことでそれが目立たなくなるだけでなく、子どもたちの関係が円滑になる。
二つ目が、子どもの驚異的な心身の発達である。保育士だけでなく、親も保育に参加して全力で子どもと向き合い、大人と子どもが競うように成長する仕組みがある。そのため、子どもは主体性、語彙力、コミュニケーション力、体力面において年齢の水準を大きく上回る成長を遂げる。それは全国的な勉強会で報告しても「信じられない」という声が上がるほどだ。
「楽しくて気付いたら子どもが7人に」
三つ目が、多子世帯が増加することだ。園を中心にして、みんなで支え合って成長することが楽しく、親は園から離れたくないと思う。そのため、予定以上に子どもを作るので、4子、5子は珍しくなく、私が取材した保護者の中には「楽しくて気が付いたら7人になっていた」と語る母親もいた。
四つ目は、卒園生たちが一様に在園中の記憶を事細かに持っていることだ。私の幼稚園時代の記憶は断片的なものが三つあるかどうかだ。しかし、話を聞いた20~30代の卒園生のほとんどが、当時友達や保育士と交わした会話から、あの時に何を食べた、誰が何をした、どういう気持ちだったかまでを逐一記憶していた。皆その理由を、「園の生活がとても刺激的だったから」と答えている。
やまなみこども園が高いレベルの保育を行っていることは、専門家も認めている。大学や専門学校の保育の教科書の一つ『子どもとつくる3歳児保育』で紹介されている実践例の大半が、やまなみこども園のものだ。それだけ専門家にとっても驚異の実践が繰り広げられているのである。
その一因が「認可外」にあることは、関係者が口をそろえるところだ。認可外の園だからこそ、行政の基準をクリアすることだけに安住せず、保護者と一体になって「子どもの発育のため」という目標に取り組んだことで、奇跡の保育が生まれたのだ、と。
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