「楽しくて気付いたら子どもが7人に」 熊本市・「やまなみこども園」が起こした四つの奇跡 一方、「補助金獲得のための保育園」が乱立する問題も

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「やまなみこども園」は、意外にも「認可外」の施設である。行政が作った形式的な基準に縛られなかったから、理想の保育が実現した。少子化による競争の激化で認可と補助金目当ての保育が横行するいまこそ、認可の諸条件やノルマを考え直す時に来ている。【石井光太/作家】

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 現在、日本の子どもの成育環境は劣化しているのではないか。

 乳幼児期からのスマホの長時間使用の影響で心身の発達の遅れが指摘されているばかりか、ライフスタイルの変化によって、ハイハイをさせてもらっていない子、公園での遊び方を知らない子、水道水を飲めない子などが増えている。

 どれだけICT(情報通信技術)が進化しようとも、子どもの成長の本質は変わらない。このため保育園などの保育施設は、子どもの健全な発育を保障し、人間形成の土台を作るための場所として、これまで以上に重要性を増している。

 しかし、現在の保育施設がその役割を十分に果たせているかは疑問である。人手不足やニーズの多様化による現場の混乱は以前から指摘されてきた。また、こども家庭庁によれば、日本全国の保育施設で起きている「不適切保育」は、年間1316件を数え、このうち約1割が虐待事案に相当するとされる。

 国は少子化対策の一環として保育に割り当てる予算を拡充しているものの、現場が大きく改善されたという声はほとんど聞こえてこない。それより公的資金に群がるように、保育業界では生き馬の目を抜くようなM&A(合併・買収)が繰り広げられ、保育の質の向上に努めるよりも行政からの補助金が下りやすい活動ばかりに飛びつく傾向が生まれている。

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