「酒、たばこの味に違和感」で発覚 食道がんを経験した著名人たちが明かす初期症状 「後悔するのはがん検診を受けていなかったこと」
食べると“胸がいっぱい”
嚥下障害に関しては、以前にも何度か経験していたという神津さんだが、そのたびに「疲れてるから」や「昨日、飲み過ぎたかも」などと深く気に留めることはなかったと話す。
「手術を受けたのは診断から3カ月後の11月でした。その間、放射線治療を3回受けて腫瘍を小さくしました。担当医から“がんステージは3相当”と教えられましたが、さいわい転移もなく、胸部と腹部を開いて食道をほぼ全摘しました。その後、胃を引っ張り上げて食道に代用する処置を施し、手術に要した時間は7時間ほどでした」(神津さん)
2週間程度の入院生活を終えた後、大きく変化したのは食生活だった。
「食の好みは変わっていませんが、食事は1日10食に分けるなど、こまめに取るようになりました。胃をせり上げて食道にしているため、食べてもすぐ“胸がいっぱい”になるんです。心臓の拍動がダイレクトに“胃”へと伝わる感覚に最初は戸惑いました。外食することもなくなり、お酒はがんと宣告されてからピタリとやめた。不思議と“飲みたい”と思わなくなったんです。食習慣の変化と体力が落ちたことを除けば、手術前とさほど変わらない生活を送っています。石橋さんも術後は、自分が主治医になったつもりで自身の体と向き合って、心地いい生活スタイルを築いてほしい」(同)
原因の9割は酒やたばこなどの生活習慣
食道がんになる原因の約9割は酒やたばこをはじめとした生活習慣とされるが、残り1割を占めるのが逆流性食道炎だと、前出の近藤医師は話す。
「胃酸の逆流によって食道での炎症が長期間続くと、がんのリスクが高まることが分かっています。逆流性食道炎の罹患率は一般に人口の20%程度とされますが、実際に診療現場に身を置いていると、受診者の3~4割が罹患していると感じます。私は新たな国民病だとの認識を持っています」
胃酸が逆流する理由は、肥満などで内臓脂肪が増え腹圧が上昇するケースのほか、加齢による筋力の低下で、食道と胃のつなぎ目に当たる筋肉が弱まることなどが挙げられる。
前出の中牟田氏も健診時、胃酸がこみ上げてくるような感覚があり、「逆流性食道炎を疑った」ことで胃カメラ検査をする流れになったという。
逆流性食道炎の患者の増加とともに、胃酸の分泌を抑える胃腸薬の販売・処方数も急増し、食道がんの予防効果への期待は高まるばかり。そんな中、過度の胃酸抑制剤の使用が胃がんの発症リスクを高めるとの研究データが登場し、注目されている。
[3/5ページ]

