「酒、たばこの味に違和感」で発覚 食道がんを経験した著名人たちが明かす初期症状 「後悔するのはがん検診を受けていなかったこと」
食道全摘でもビールはうまい
前出の近藤医師が補足する。
「ステージ0など、ごく初期の食道がんであれば、99%が内視鏡手術で腫瘍部を切除するだけで済み、社会復帰も容易です。しかし進行していれば、外科手術や放射線治療で対処するのが一般的となります」
中牟田氏は手術後、ICU(集中治療室)で2日間過ごし、一般病棟へ移って2週間後に退院した。
「体重は10キロ以上減り、いまも47キロ程度と、往時の52~53キロには戻っていません。食欲はあるのに、食べても腹に落ちていかない感じで、食事は1日5回に分けて取るようにしています。実は医師から“ビールが一番入りませんよ”とくぎを刺され、大動脈弁狭窄症で心臓の手術を受けた経験がある(同じ海援隊の)武田鉄矢さんからも“手術明けの酒はまずいぞ”と聞かされていた。だから退院後、初めてビールに口をつけた時は、恐るおそるといった感じでしたが、飲んでみると“うまいじゃん”って感動した。食道がんになって、そんな小さな幸せをより実感できるようになりました」(中牟田氏)
クリニックへ足を運んだのは「最近、酒を飲んでもまずい」と感じたのがきっかけの一つだったといい、1日2箱喫っていたたばこの味にも違和感を覚えることがあったと打ち明ける。
「いまとなって後悔するのは……」
東京大学医学部附属病院放射線科特任教授を務める「がん専門医」の中川恵一氏が言う。
「食道がんは圧倒的に男性に多く、年間約2万人以上が罹患しています。60代をピークに高齢者に多く見られるがんで、最大の原因がお酒とたばこです」
石橋について言えば、「20年前に禁煙したが、酒は最近まで嗜んでいた」(民放キー局関係者)というから、60代・男性・飲酒という三大リスク要因がピタリと当てはまる。
「お酒を飲むと、アルコールは体内でアセトアルデヒドという発がん性のある毒性物質に分解されますが、日本人はこのアセトアルデヒドを解毒する2型アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きが弱い人が多い。特にお酒を飲んで顔の赤くなる人が毎日3合飲むと、食道がんリスクは50倍に跳ね上がるというデータがあります」(中川氏)
22年8月に食道がんと診断された作家の神津カンナさん(66)も、タバコは喫わないが、お酒をよく飲んでいた一人だ。
「前日に亡くなった事務所社長の葬儀の準備に追われていた最中、すこし休憩して春雨サラダを食べようとしたのですが、喉に引っかかってどうにも嚥下(えんげ)できなかったのです。それで“おかしいな”と思って病院に行って検査したところ、翌日に食道がんだと判明しました。思い当たる節としては、量は多くありませんが、それまでビールやワインをほぼ休肝日なく飲んでいたことでしょうか。いまとなって後悔するのは、自由業の気楽さや忙しさにかまけ、がん検診などを全く受けていなかったことでした」(神津さん)
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