「僕は母に愛されなかった。だから妻との間には…」 2度の不倫・再婚を“毒親”のせいにする50歳男性の苦悩

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またも不倫

 二度目の妻ともうまくいかないかもしれないという恐怖に襲われたとき、彼はまた逃げた。よりによって社内の別の部署のゆかりさんと関係を持ってしまったのだ。ゆかりさんとは同期で、たまにある同期会でも顔を合わせていたが、それほど親しいわけではなかった。ところが同期会の帰りに、ゆかりさんが「舞子とうまくいってる?」と声をかけてきたのだ。二次会を抜けてふたりでバーに行った。

「ゆかりが、『舞子の秘密、教えてあげようか』と言い出した。ここでは言えない、ふたりきりの場所でなら教えられるんだけどなあと。酔っていたんでしょうね。そのまま帰る手もありましたが、なんだか僕も満たされないものがあったので、ゆかりとホテルに行ってしまったんです。舞子の秘密とは、結婚直前まで上司と不倫していたということでした。ああ、と納得がいくところがありました。舞子がやたらと結婚を急いでいたのは、上司と手を切りたかったからでしょう。『でもねえ』とゆかりはニヤッと笑うんです。『あのふたり、今も続いてるよ』って。これは衝撃でした。やっぱり女を信じたオレがバカだった、母の呪いだと思った」

 なぜここで母が出てくるのかわからないが、彼の中では女性イコール母に変換されてしまうのかもしれない。それだけ母への思慕と憎悪が混濁しているのではないだろうか。

「それとなくオレは知ってるよという雰囲気を醸し出したんですが、舞子は気づかない。ごく普通に振る舞っているので、なかなか神経が太いなと思っていました。結婚して半年ほどたったころ、ちょっとしたことからケンカになったんです。『あの上司とデキてるんだろ』と言ったら、舞子が泣き出した。泣かれると弱いので、僕はそのままプチ家出をし、深夜になってからそうっと帰宅しました。舞子は起きていた。そして結婚前に確かに家庭ある上司と関係があった、でも結婚後はいっさいない、と。わかった、信じるよと言いましたが、本当は信じていませんでした」

 それからはゆかりさんとの関係が続く。もちろん、たとえ妻が今も上司とつきあっているとしても、自分だって不倫しているのだから何も言えないとわかっていた。ゆかりさんとの関係も、今思えば真剣だったわけではない。むしろ、どこにも居場所がないような思いの中、少しでも心の渇きを癒やそうと漂っていたのではないだろうか。

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