「僕は母に愛されなかった。だから妻との間には…」 2度の不倫・再婚を“毒親”のせいにする50歳男性の苦悩

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すがりつき「捨てないで」という母

 大学へ入学してから、彼はあまり家に寄りつかなくなった。友だちの家に泊めてもらったり、恋人のアパートで同棲していたりしたからだ。

「たまに帰ると母親がすがりついてくるんですよ。あの頃は少し精神的におかしかったのかもしれない。父もほとんど帰ってなかったみたいですしね」

 そしてあるとき出かけようとすると、またも母がすがりついてきた。母は言った。「私を捨てないで」と。「そんなお母さんは見たくない」と彼は出かけた。その日は帰宅しなかったのだが、なんだか気になって翌日、帰ってみると母がリビングで倒れていた。救急車を呼んだがすでに事切れており、警察が呼ばれた。

「事件性はなくて、死因は脳溢血。僕が出かけてから1時間後くらいに突然亡くなったようですが、居間には吐いたあとがあった。苦しんだのかもしれません。表情も歪んでいたし。自分が殺したようなものなのかもしれないと思いましたね」

 彼はそのことで苦しんでいたのだろう。一気にそう言うと、それまで見せたことのないようなつらそうな顔を見せた。そのことは誰も知らない。母は病気で亡くなったとしか人には言っていないとつぶやいた。

 求める愛を与えてくれなかった母、息子のためと言いながら自分の存在を知らせるような行動をとる母、世間の母とは違っていたし、うっとうしいとばかり思っていた母。なのに突然、消えてしまうと、雅史さんの心にもぽっかり穴があいた。

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