「不倫をしたが妻を傷つける気はなかった」 48歳夫が唯一“罪悪感”をおぼえる意外な女性とは

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娘が産まれ「やっと自分の人生が」

 その後、彼が結婚したのはやはり気の強い春乃さんだった。春乃さんは取引先の企業に勤務しており、一時期一緒に仕事をしたことで親しくなった。

「大変な仕事でしたけど、彼女の発想の柔軟さや理論武装に助けられたところが多々ありました。敬意が恋に変わったという感じでしたね。仕事が終わったとき、今度、食事に行きましょうと誘って、そこからつきあうようになりました」

 32歳のとき、1歳年上の春乃さんと結婚した。過去、大事な人を失ってきたことを話したとき、気の強い春乃さんが涙を浮かべたのがうれしかったと彼は言う。

 結婚してすぐ春乃さんは妊娠、翌年、娘が産まれた。

「子どもが産まれたとき、やっと自分の人生が始まったような気がしました。もう過去にとらわれるのはやめよう、前だけを見つめて3人で歩いていこうと思えた。共働きでの子育ては大変だったけど楽しかった」

 どうしても時間がとれないときは、近所に住む晶一さんの母が助けてくれた。妻が仕事をすることに大賛成の母に、春乃さんも敬意を抱いていたのでふたりの仲は良好だった。

 娘が小学校に上がり、子どもには子どもの人生が始まっているのだと実感すると、彼にはまた心境の変化があった。

「守りに入ってないか? と。今の職場での立ち位置、家庭の維持。そんなことばかり考えている気がしたんです。今日を精一杯生きているのか。母に言われ続けた一言が、僕のなかでよみがえった。ここで立ち止まっていてはいけない」

 ちょうど職場で配置転換があり、彼は営業部から、突然、慣れない宣伝部に行くことになった。そこで彼は積極的にPR関係のセミナーに参加、さまざまな部署と連携しながら自社商品をどうしたらPRできるかを考え、挑戦しつづけた。

「40歳を過ぎてからのチャレンジでした。短期間でいろいろなことを勉強して詰め込んで。うちのPRを一手に担っていた優秀な先輩が急に退職したので、そういうことになってしまったんですが、世の中、何があるかわかりませんよね」

 春乃さんにも毎日、会社であったことを話した。彼女もよく聞いてくれた。ふたりはどんなに忙しくても会話が絶えない夫婦関係を築いていた。

「僕は春乃で、春乃は僕。ずっとそう思っていました。信頼していたし、何かあったときいちばん最初に伝えたいのは春乃だった。もちろん、意見されることも多かったけど、彼女の意見は傾聴に値すると思っていました。その意見を取り入れるかどうかはまた別の話ですが、それはお互いさまです」

 絶対的な信頼感と同時に、何があっても味方がいることへの安心感で、彼は仕事に全力で向かうことができた。

 それなのに今から3年ほど前、彼は「落とし穴に落ちたように、他の女性を好きになっていた」と言う。絶対的な信頼感を持った妻がいる彼でさえ、他の女性に心が移ることがあるのだろうか。

「妻がいるのに他の女性に……という言い方がよくわからないんです。妻と比べて誰かを好きになるわけではないでしょう。こっちはこっち、あっちはあっち。たまたまタイミングが合って関係ができてしまった。そういうことなんだと思います」

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