「プーチンの頭脳」の娘を爆殺したのは誰か ロシア反体制勢力説、ウクライナ女性説…入り乱れる報道の真贋

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 8月20日、ロシアの首都・モスクワ郊外で乗用車が爆発。アレクサンドル・ドゥーギン氏(60)の娘・ダリヤ氏(29)が殺害されたという事件は、ロシアやウクライナはもとより、欧米各国や日本にも衝撃を与えた。担当記者が言う。

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「ドゥーギン氏の肩書は思想家や哲学者とされることが多く、ウラジミール・プーチン大統領(69)の外交政策に大きな影響を与えた人物と言われています。娘のダリヤ氏はジャーナリストですが、ロシアのウクライナ侵攻を積極的に評価していました。戦争に関して虚偽の情報を拡散させたとして、欧米各国が非難し、制裁の対象となっていました」

 爆殺という手口から、ロシアのウクライナ侵攻を背景にしたテロ事件と考えられる。そのためか情報は錯綜している。

「事件が発生してから間もなく、ロシアのメディアは『実行犯はウクライナ人の女性』というニュースを大々的に報じました。実行犯と名指しされた女性は、アゾフ大隊に所属していたことがあり、ダリヤ氏と同じマンションに居住し、犯行の機会をうかがっていたというのです。また、実行犯の女性はエストニアに逃亡したとも伝えられています」(同・記者)

 だが、ウクライナ政府は犯行への関与を完全に否定。大統領府長官顧問は「わが国はロシアのようなテロ国家ではない」と反論した。

謎の組織NRA

 ややこしいことに、犯行声明を発表する組織も出現した。FNNプライムオンラインは22日、「“プーチンの頭脳”の娘 爆殺される犯行声明」の記事を配信、YAHOO!ニュースのトピックスにも転載された。

「ロシア国内の反プーチン勢力『国民共和国軍(NRA)』が、犯行声明を出したという記事でした。しかし、これには注意が必要です。ロシアの元下院議員で現在はウクライナで亡命生活を送るイリヤ・ポノマレフという人物が、『犯行はNRAという反体制組織が行い、私が彼らの主張を公開する許可をもらった』と発表したのです」(同・記者)

 イスラム過激派がテロ行為を行った際は、彼らの公式サイトに犯行声明がアップされることが少なくなかった。だが、NRAの公式サイトは見つかっていない。それどころか、組織が実在するかどうかも分からないのだ。

 ちなみにイリヤ・ポノマレフ氏は、2014年のクリミア併合について、ロシア下院で行われた採決の際に反対票を投じたことで知られている。

「NRAが犯行声明を発表したのではなく、反プーチン派の元下院議員の口から間接的に語られました。そのため、かなり信憑性が下がったようです。ネット上では読売新聞などがNRAの犯行声明について触れましたが、8月24日現在、全国紙の紙面でNRAについて言及した記事は1本もありません」(同・記者)

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