「プーチンの頭脳」の娘を爆殺したのは誰か ロシア反体制勢力説、ウクライナ女性説…入り乱れる報道の真贋

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政府内の“裏切り者”

「警告していた通り、アゾフ大隊はテロも辞さない非道な組織だ。ウクライナに対する特殊軍事作戦は正しかった」──テロ事件の“容疑者”を報道させることで、プーチン大統領は、こんなメッセージもロシア国民に伝えようとした可能性がある。

「ちなみに、ロシアのメディアに容疑者と名指しされた女性の父親が、ウクライナのメディアの取材に応じています。父親は娘がウクライナ軍に所属していたことは認めましたが、アゾフ大隊に加わっていたことは否定しました。ただし、いつ取材が行われたのか不明な点も多く、これはこれでウクライナ側のプロパガンダの可能性もあります」(同・中村教授)

 そもそも爆発が起きたのは、首都・モスクワからそれほど離れていない場所だ。たとえウクライナの特殊部隊から精鋭を募り、複数犯が爆殺を狙ったとしても、作戦の難易度は極めて高い。

「ロシア政府の内部で働く関係者が、ウクライナの諜報機関と連絡を取り合い、爆殺テロの手引きをしたと考えるほうが自然でしょう。ロシア側の関係者で、戦争の行方に危機感を持ち、プーチン大統領の現状を把握しつつ、国を憂うる人間となると、自動的に数は絞られます。やはり公務員、それも西欧社会の現状もよく知っている若手官僚が“内通者”のイメージにぴったりです」(同・中村教授)

FSBの前科

 内通者が存在しても不思議ではない政府機関──こう考えた際、“前科”があるのはロシア連邦保安庁(FSB)だ。

「ロシア軍がウクライナに侵攻する前から軍事作戦を問題視し、一部の職員が秘かにアメリカや西欧各国に情報を漏洩していました。プーチン大統領はKGB(ソ連国家保安委員会)を前身に持つFSBの裏切りに激怒し、粛清を行っています。イギリスの高級紙・タイムズがキャッチして、4月に『150人粛清』と大きく報じました」(同・中村教授)

 デイリー新潮も中村教授に解説を依頼した記事「プーチン、150人スパイ粛清で権力基盤は崩壊寸前 諜報機関トップの“合成動画”を敢えて流した狙い」を4月18日に配信している。

「NRAという名称が実在するのかは分かりませんが、ロシア政府内に反プーチンのグループが誕生したのは事実でしょう。ロシアの未来を憂い、情報漏洩など様々な反逆行為に手を染めてきたと考えられます。ウクライナとの戦争は、大義もなければ戦果も存在しません。ロシアと友好関係にあったカザフスタンも最近は冷淡で、プーチン政権は北朝鮮に助力を求めているほどです」(同・中村教授)

 ウクライナ侵攻により、プーチン政権の“締めつけ”が弱まっていることも背景にあるという。

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