「プーチンの頭脳」の娘を爆殺したのは誰か ロシア反体制勢力説、ウクライナ女性説…入り乱れる報道の真贋

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帝政末期と酷似

「ウクライナに侵攻する前、プーチン大統領は国内を強権で統制し、反体制の気運を封じ込めていました。しかし、電撃制圧を狙った侵攻作戦は失敗し、戦線は膠着。政権は戦争継続に相当なエネルギーを奪われています。国内の監視が緩まり、反プーチン派の活動を許しているのではないでしょうか」(同・中村教授)

 しかし、今のところロシアの世論は動かない。戦争の行方を傍観しているだけで、反プーチンのデモが始まることはない。心ある国民は、黙ってロシアから出国するだけだ。

「反プーチン勢力の直面している絶望を考えると、1825年に起きたデカブリストの乱が脳裏に浮かびます。ナポレオン戦争に参加した青年貴族は、西欧各国の高い国力を目の当たりにしました。彼らは祖国の現状を憂い、ロマノフ家に反旗を翻したのです。今ではロシア革命の先駆的行動と評価されていますが、反乱自体は簡単に鎮圧されました。当時の青年貴族が直面した絶望と、反プーチン勢力の絶望は似ていると思います」(同・中村教授)

 ロシアの青年貴族が母国の刷新を訴えても、一般大衆が反帝政で団結することはなかった。何をやっても体制打破は難しい──青年知識人層の間には虚無主義(ニヒリズム)が拡がり、「皇帝や政府高官を暗殺するよりほかは、体制打倒の方法はない」とテロリズムにすがる者も多かった。

今後もテロは増加?

「経済制裁は真綿で首を絞めるようにロシア国民の生活を、じわりじわりと圧迫しています。戦争は膠着状態で八方塞がり。日露戦争や第一次世界大戦で敗北を重ねた帝政ロシアの末期と状況は酷似しています。そんな社会情勢の中から生まれた爆殺テロだった、と指摘できるのではないでしょうか」(同・中村教授)

 ロシアの専門家は9月11日に注目しているという。この日、ロシアでは統一地方選挙が行われるのだ。

「今のところの予想では、野党が議席を伸ばすと見られています。プーチン政権としては座視しているわけにはいかず、不正投票に手を染める可能性が指摘されています。それに負けじと、反プーチン勢力がテロ事件を引き起こすことは充分に考えられます。具体的には、県庁や投票所の爆破や放火、投票箱の強奪などです」(同・中村教授)

デイリー新潮編集部

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