肝臓・胆道・膵臓の「難治がん」との賢い闘い方3 「生存率」をどのように読み解くのか?

ドクター新潮 医療 がん

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“エリート患者”を選り好み

進藤:大腸がんはここ20年で大きく治療法も予後も進歩したがんの一つですね。私が研修医の頃までは大腸がん肝転移はほぼ手術一本で勝負をすることが多かったですが、分子標的薬を用いた新しい抗がん剤治療の登場とともにそれぞれの患者さんにベストな薬剤を選択するためのバイオマーカー(がんの遺伝子変異など)の解明が進み、抗がん剤でがんを小さくして手術による根治を目指すとか、一昔前では絶対に救えなかったような患者さんが長期生存できる時代になったと思います。

大場:転移性肝がんの中でも、とりわけ大腸がん肝転移は重要なテーマですので、機会をあらためて詳細を議論することにしましょう。

 ところで同じ生存率でも、「各施設別の5年生存率」をめぐっても、その格差がメディアで物議を醸しました。国立がん研究センターの閲覧サイトには解釈に対して「その施設の治療成績の良し悪しを論ずることはできません」とあり、施設ごとで治療している患者背景が異なるため、この注意書きには一定の理解はできます。もっとも、実際にがん専門のセンター病院では、比較的年齢も若くて基礎疾患リスクの少ない、いわゆる“エリート患者”が選り好みされているフシは否めません。すでに患者選択バイアス(偏り)が存在しているのは本当でしょう。いつか別の機会で議論できればと思っていますが、新規抗がん剤の治験の場合もそうだと言えます。少しでもリスクを有する患者は治験には絶対に入れない。

 生存率の話に戻りますと、転移しても治癒ポテンシャルのある一定の患者集団を包有しているはずの大腸がんステージⅣ (2013-2014年ケース)の5年生存率について、施設ごとの成績をみると、患者背景のバイアスを差し引いてもかなりの格差があることがわかります。地域の基幹病院でも5年生存率が10%にも満たないどころか0%の施設も少なくありません。

 ちなみに進藤先生の虎の門病院は27%、われわれが一緒に勤務していた東京大学医学部附属病院は26%。症例がいちばん多くてもっとも成績が良かったのはがん研有明病院の34%。進藤先生と同様にがんの難局に挑むエキスパート外科医で、現在、順天堂大学医学部肝胆膵外科教授の齋浦明夫先生がいらっしゃった時のデータです。ちなみに、国立がん研究センター中央病院は20%ほどです。進藤先生、なにかコメントはありますか?

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