「働く」「学ぶ」「暮らす」と未来のオフィス――黒田英邦(コクヨ株式会社代表取締役社長)【佐藤優の頂上対決】

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変わるオフィスの役割

佐藤 それは、オフィスの重要性が再認識されたということでもありますね。

黒田 はい。すでにオフィスの重要性は共通認識になっていると思います。リモートワークが広がりオフィスが減らされているとはいっても、すべてをなくす会社はありません。3分の1、4分の1といった一部分を減らしているに過ぎない。そして経営者の方々は、残ったオフィスをどう変えるかに強い関心があります。

佐藤 経営側のオフィスの位置付けも大きく変わってきましたね。かつては効率や生産性を上げるためでしたが、いまは人材確保やロイヤルティー(忠誠心)を上げる効果が期待されています。

黒田 政府主導の「働き方改革」で大きく変わりました。それまでは投資したらいくら返ってくるんだ、と問われ、フリーアドレス化も、席数を減らすという効率重視の面がありました。それが、オフィスを変えないと人材を獲得できない、と言われるまでになってきた。

佐藤 人手不足ですし、中小企業は新卒、中途採用にも苦労しています。

黒田 私どもは前から「働き方を変えましょう」と言ってきましたが、それ以上にお客様のほうが考えている。それがコロナでさらに加速している感じです。

佐藤 キーワードは「居心地」ではないかと思うんです。最近の学生に、どういう会社に就職したいかを聞くと、資本の大小や知名度ではなく、居心地のよさそうなところなんですね。また会社に満足している30代前半の人たちの会話にも、居心地という言葉がよく出てきます。

黒田 組織やチームにおいて「心理的安全性」(組織や集団の中で、非難や拒絶の不安がなく発言できる環境)が必要と言っていることに通じますね。

佐藤 オフィスの変革は大企業がけん引していると思いますが、オフィス面積が狭い中小企業でも進んでいるのですか。

黒田 確かにひと昔前は、大企業で空間にゆとりがあるところが目立っていたのですが、これもかなり変わってきました。企業規模にかかわらず、いま「ワークポッド」という電話ボックス型のブースがよく売れています。オフィスでお客さんとウェブ会議や電話をしたり、集中して仕事をするのに、非常に効果的なんです。

佐藤 なるほど、そこは需要がありそうですね。

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