対談連載:難治がんとの賢い闘い方1 東京目白クリニックの大場大院長×虎の門病院消化器外科の進藤潤一医長

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5年生存率が50%を超えない難治がん

進藤:肝がんはそれ自体を治療で治せたとしても、背景にある肝臓(肝臓のがんではない部分)が新たながんを作り出す母地となってしまっているため、真の意味での「根治」が得られにくいがんの一つです。したがって、がんそのものに対する治療とともに、肝臓の疾患に対する治療も「新たな発がんの予防」という観点からも重要となります。ウイルス性肝炎の場合は、抗ウイルス治療が発がんの抑制につながるというエビデンスは確立しており、肝がんはウイルス感染を背景とするがんの中では予防できるがんの一つとなりつつあります。

大場:肝がん治療戦略の詳細については、別の回でぜひともよろしくお願いいたします。さて、一言でがんとはいっても、何のがんで、病気の進み具合(進行度)や生物学的なふるまい(悪性度)によって患者さん個々で、治療方針や治癒の確度も変わってくるわけですが、今回の連載で進藤先生ととことん議論をしたいのは「難治がん」についてです。その字のごとく治るのが容易ではない、受ける治療の質がシビアに問われるがんです。

明確な定義はないですが、国立がん研究センターのサイト上では「治りにくいがんのことです。早期発見が難しい、治療の効果が得られにくい、転移・再発しやすいなどの性質があるために、診断や治療が特に難しいがんのことをいいます。」と記されています。あるいは、5年生存率が50%を超えないがんのことも指します。そのような観点から、先に触れた肝がんも、5年生存率が35.8%(2009-2011年データ)ですので難治がんとして扱われます。

治療自体も時間との勝負に

進藤:私が専門とする肝臓、胆道、膵臓のがんはいずれも「難治がん」に相当しますので、正直毎日頭を悩ませながら一人ひとりの患者さんを治療しているわけですが、肝がんが難しいのは、先に述べたように、がんそのものだけでなく肝臓自体も病気であるという点です。これが肝がんを「難治がん」たらしめている理由の一つでもあります。治療の考え方についてはまた詳しくお話できればと思いますが、肝がんは、がん自体の悪性度が高いことに加え、背景肝の機能が悪いことが、がんを治療できる・できないに大きくかかわってしまうという問題があります。

肝がんが進行していればしているほど、背景肝疾患の程度がひどければひどいほど、治療の選択やその安全性の確保には高度な知識と技術が求められますし、治療自体も時間との勝負になってきます。そうした意味で我々専門家が正しい情報発信を行い、患者さんが路頭に迷ったり、根拠のない治療法に騙されたりしないよう、広く教育・啓蒙活動を行っていくことは、我々の大切な仕事の一つだと思っています。

大場:本当にその通りだと思います。また「難治がん」ゆえに、詐欺的な医療ビジネスの標的対象にされやすい傾向にあり、この問題もどこかで取り上げたいと思っています。進藤先生の話から、肝がんの治療戦略を考える時に、がん自体をどう制御するかと併せて、背景の肝臓自体へのケアもパラレルに必要だということがわかりました。確かに、通常のがんであれば、手術を受けてから2年とか3年たって再発がなければ、がんは治ったかもしれませんよ、大丈夫ですよ、という希望を示せるのですが、肝がんの場合は違いますね。

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