対談連載:難治がんとの賢い闘い方1 東京目白クリニックの大場大院長×虎の門病院消化器外科の進藤潤一医長

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がん治療を専門とするエキスパートから学ぶ

 最新の統計によると国内のみで一年間にがんで死亡した患者数は38万人近くにのぼる(2020年データ; 国立がん研究センターがん情報サービス)。生涯において罹患リスクが2人に1人である身近な「がん」という重篤な疾患について、質の高い情報が共有され、ふだんから建設的な議論ができているだろうか――。東京目白クリニック院長の大場大氏、虎の門病院消化器外科医長の進藤潤一氏はそういった問題意識を共有する、がん治療を専門とするエキスパートだ(下の経歴を参照)。今回からお届けするのは、がんの中でも難治がんとされる分野について、そのように診断されたらどうしたらよいか、ベストな治療にたどり着くためにはどうしたらよいかなど、従来にはなかった正しいがんリテラシーを育むための有益な情報を提示する対談連載である。

大場大 おおば・まさる
1999年 金沢大学医学部卒業、2008年 医学博士。2021年より東京目白クリニック(豊島区) 院長。2009年-2011年 がん研有明病院。2011年-2015年 東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教。2019年より順天堂大学医学部附属順天堂医院肝胆膵外科 非常勤講師も兼任。専門は、外科学、腫瘍内科学、消化器病学全般。書籍・メディア掲載も多数。

進藤潤一 しんどう・じゅんいち
2004年 東京大学医学部卒業、2012年 医学博士。2014年より虎の門病院消化器外科(肝・胆・膵)所属。2011年-2012年 米国MDアンダーソンがんセンター腫瘍外科。2013-2014年、東京大学医学部附属病院肝胆膵外科 助教。専門は、肝胆膵外科学、腫瘍外科学。特に肝臓外科領域の研究業績では世界の若きリーダー。医師向けの教育講演も国内外で多数。

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大場:まず、今回の企画を立ち上げることになった経緯について触れたいと思います。私の過去の著書(『がんとの賢い闘い方―「近藤誠理論」徹底批判―』など)における軸と同じように、“治りたい!”と願いながらも、重要な意思決定を惑わしたり、足を引っ張ったりするエセ医学が跋扈(ばっこ)する状態を少しでも改善したいと願うからです。新型コロナウイルス感染症をめぐっても、偏った医療否定論者が“活躍”してしまったり、とりわけテレビメディアでは、根拠がないのに好き勝手にジャッジしてしまう言い切り型の無責任なコメンテーターや評論家が“大量発生”する状況が続きました。

もちろん、かなり身近にリスクが迫っている事柄のせいか、SNS上などでは様々な世界中の科学的根拠(エビデンス)がタイムリーに共有され、個人個人で一定の解釈が求められるようになっているのは医学リテラシーのそれなりの進歩だとは思っていますが。

進藤:そうですね。一口にエビデンスと言ってもその信頼性には様々なレベルがあるわけで、必ずしも論文や学会で発表されたものが100%正しいというわけではありません。特に医療情報は専門性が高いため、一般の方々にその真贋を判断せよというのは無理があると思います。一方で「医師」という肩書があれば医療のことは何でも語れるというのは大きな間違いで、私もコロナウイルスの話をせよと言われれば素人同然です。

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