出処は不明… ロシアの「黒いプロパガンダ」を広めているのは誰か

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レフチェンコ事件の教訓は

 かつて、このようなブラック・プロパガンダ工作が露見したことがあった。日本に駐在していたKGB将校スタニスラフ・レフチェンコが1979年にアメリカに亡命したあと、日本でなにをしていたかアメリカの下院情報特別委員会で証言し始めた。それによれば、彼は200人以上もの、マスコミ関係者や政治家を操って、情報収集と親ソプロパガンダ工作を行わせていた。それらの中には朝日新聞、テレビ朝日、共同通信、産経新聞の幹部、社会党、自民党の有力議員がいた。その人数の多さと、豪華な顔ぶれは驚くほどだ。

 この事件は大変なスキャンダルになり、マスコミを賑わせたが、だれも罪に問われず、うやむやになってしまった。前にも述べたように、このような行為を取り締まる法律がなかったからだ。そして、大きな騒ぎになったのに、このあとも立法化の動きは起こらなかった。

 現在、日本のメディアでせめぎ合っているのは、ウクライナ側のホワイト・プロパガンダとロシア側のブラック・プロパガンダだといえる。このような視点で毎日の報道を見ると、いままで見えてなかったものが見えてくるのではないか。

 冒頭で紹介した「情報が錯綜していて、どれが事実でどれがプロパガンダなのかわからない」とか「ウクライナ側だってプロパガンダをやっているのだからむやみに信じてはいけない」といっている人は、本人も知らないうちにロシア側のブラック・プロパガンダに引っかかっているのかもしれない。

 テレビに出ているコメンテーターなどの中にも、不思議なほどロシア側の主張に近いことを繰り返している人がいるようだ。そうした人は何らかの事情があり、積極的にブラック・プロパガンダに協力しているのかもしれない。

有馬哲夫(ありまてつお)
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『日本人はなぜ自虐的になったのか』など。

デイリー新潮編集部

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