焼津「カツオ窃盗事件」は“第二幕”へ 「窃盗犯」を処分なしで勤務させ続ける漁協の呆れた隠蔽体質

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静岡県警は鹿児島県枕崎港にも捜査員を派遣

 そして、並行していて進められてきた「第二ルート」の捜査が大詰めを迎えつつある。昨年12月末に、県警は第二ルートの関係者先の一斉家宅捜索に入った。

「ガサが入ったのは、神奈川県に本社を置く運送会社『ホクユウ』、焼津市の冷凍倉庫会社『焼津マリンセンター』、そして大手水産会社『マルハニチロ』の完全子会社である『大洋エーアンドエフ』です。もし大手水産会社の関係者が窃盗に関与しているとなると、大変なことになると水産業界も大きな関心を寄せています。年明けから県警は、盗品が運ばれていたとされる鹿児島県枕崎漁港にも捜査員を派遣しています」(同・県警関係者)

 このルートでも漁協関係者が手引きしていた可能性が高いと言われている。詳しくは後述するが、この窃盗は漁協職員の協力がない限り成立しないのだ。

 第二ルートで、被害を受けた宮城県に本社を置く船会社の焼津支社の所長が、これまでの経緯を明かす。

「4、5年前から、うちの船頭が『なぜか焼津より鹿児島のほうで数字が上がる』とよく口にしていたんです。最初は、そんなことが公正な市場であるわけないだろうと思っていました。ただ、一昨年の6月、船頭が『800はあるはずなのに710しか出ねえ。あと100トンはどこに行ったんだ』と烈火のごとく怒り出した」

あと100トンはどこにいっちまったんだ

 遠洋漁業のカツオ漁は遠い場合は、赤道近くまで出向く。1回の航行は40〜50日。船いっぱいにカツオを積んだ後、鹿児島県の山川か枕崎、焼津のいずれかの漁港に寄港し、4、5日休んだら再び出航するというサイクルで動いている。マグロと違いカツオは船内で計測できず、漁獲した魚が何トンだったか判明するのは、水揚げ終了時となる。漁協の計量係が計測し、買い主の水産加工会社に引き渡されるのだが、船頭の目分量と100トンもの差があるというのである。

 船頭からのクレームを受け、所長らは漁協に抗議したが、担当者は怒って「そんなことを言うなら、もう入ってこなくてもいい。心外だ」と言い放ったという。だが、それでも不信感が拭えなかったため、それから所長は、水揚げする度に現場で見張るようにした。そして、昨年3月に決定的な証拠を掴んだのだった。

「大洋エーアンドエフが競り落とした50トン分のカツオを、ホクユウが焼津市内の冷蔵庫に運送する時のことです。荷を積むスピードが遅いのに気づいた。怪しいことをやっているなと」(所長)

 そこで漁協職員に防犯カメラを見せてもらうと、50トンを運ぶのにはトラック5台で済むはずなのに、もう1台、10トン分を積んで計量しないまま走り去るトラックがはっきりと映っていたのだ。

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