中年太りの原因は「代謝の衰え」ではなかった! 「サイエンス」に掲載、本当の原因は?

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「ちょっと」の積み重ね

 今、「ロカボ」と言われる低糖質ダイエットが持て囃されています。たしかに、糖質(≒炭水化物)を減らせば、一時的に体重は大きく減ります。しかしこれは、本来、体内に保持されるはずの水分が保持されていないだけに過ぎません。

 体内の水分の多くはグルコースが長く連なったグリコーゲンにくっつく形で存在しています。糖質=グルコースを削れば、当然、グリコーゲンが減少し、それに伴い体内の水分も減る。その結果、体重が減るわけですが、これは言ってみれば、身体が脱水症状に陥っているに等しい状態なので、必ず頭打ちになります。グリコーゲン自体、生命を維持していく上で必須なものなので、糖質制限には限界があるのです。もちろん、糖質制限をやめれば体重は元に戻ります。ロカボだけで「痩身を維持する」ことは難しく、やはり運動量の低下に気をつけるべきでしょう。

 中年太り以外では、最近の研究によって「コロナ太り」も間違いなく存在するという見方が定着しつつあります。例えば、座位中心のオフィスワークをしている30代男性の1日の総エネルギー消費量が2800キロカロリーであるのに対し、テレワークになると2400キロカロリーに低下するという研究結果があります。テレワークの人には、自転車を漕ぐなど15分程度の運動を4回してもらったにも拘(かかわ)らずです。座位中心とはいえ、通勤で歩く、職場で書類を渡すためにちょっと移動する。この「ちょっと」の積み重ねが、意外とカロリー消費に役立っているのではないかと考えられます。

年末年始やゴールデンウイークに体重が増加

 さらに肥満に関係する話で言うと、「ホリデー・ウエートゲイン」という言葉を覚えておいて損はないと思います。

 これは、休日が連続することで運動量が低下し、カロリー消費量が減るために体重が増えるとされる現象です。肥満大国の米国では、人は10年で10キロ増えるといわれますが、これにはホリデー・ウエートゲインが大きく影響しています。長期休暇で体重が増え、それがまた次の長期休暇に持ち越され、そしてまた次の長期休暇に……といった具合に、雪だるま式に太っていってしまうのです。ちなみに日本では、原因はまだ不明なところも多いのですが、年末年始はもちろん、ゴールデンウイークに最も体重が増えるというデータがあります。

 いずれにしても、年末年始のホリデーとなる今の時期は、代謝を言い訳にできない以上、食生活や運動量など、自身の肥満要素を見つめ直すよい機会なのではないでしょうか。

山田陽介(やまだようすけ)
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所特別研究員。1980年生まれ、京都大学総合人間学部卒業。京都府立医科大学での日本学術振興会特別研究員などを経た後、2014年から「国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所」で研究に従事。研究テーマは、運動科学や栄養・代謝学など。

週刊新潮 2021年12月30日・2022年1月6日号掲載

特集「『若い時と違い“代謝”が減ったから』ではなかった! 『中年太り』本当の原因」より

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