中年太りの原因は「代謝の衰え」ではなかった! 「サイエンス」に掲載、本当の原因は?

ドクター新潮 健康 運動

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基礎代謝は20代から50代でほとんど変化せず

 人間は摂取したエネルギーを消費することで生きています。エネルギー消費には3種類あり、「基礎代謝」、「食物の消化吸収」、そして「身体活動」です。基礎代謝は、生きていく上で臓器などが自然にエネルギーを消費することを意味し、食物の消化吸収は食べる時に使うエネルギー消費、身体活動は家事やスポーツなど身体を動かすことに伴うエネルギーの消費です。これら三つを合わせたものが代謝、すなわち総エネルギー消費です。

 これまで主に注目されてきたのは基礎代謝でしたが、基礎代謝が総エネルギー消費に占める割合は50~70%に過ぎません。そこで今回、その他二つの食物の消化吸収と身体活動を合わせた総エネルギー消費量に着目したところ、20代の若者も中高年も、1日に消費するエネルギーはほとんど変わらないことが浮き彫りとなったわけです。なお今回の調査では、基礎代謝に関しても実は20代から50代までほとんど変化がないことが分かりました。

 しかしながら、肥満度合いを表すBMI(体格指数)の値は、20代よりも30~50代のほうが明確に大きい。つまり、中年太りという「現象」は間違いなく存在しているのです。では、代謝が理由でないとすると、なぜ中年太りは起きるのでしょうか。

 世代別の総エネルギー消費量が変わらない以上、原因は他にあると考えられます。アウトプットである総エネルギー消費量に変化がないのであればインプットに問題があるのではないか、つまりカロリー摂取量の増加が中年太りの直接的な原因ではないかと仮定することができます。若い時と同じように中年になってからもエネルギーを消費したところで、若い頃よりも多量のカロリーを摂取すれば、当然、余剰カロリーが体内に溜まり、太ってしまいます。

世代によって明らかに変化する運動量

 しかし、現時点で食べ過ぎが中年太りの原因だと断定することはできません。なぜなら、意外に思われるかもしれませんが、加齢に伴うカロリー摂取量の変化の調査は非常に難しいからです。

 現状では、食べたメニューを被験者自身に毎日記録してもらう程度の調査しかできません。ところが、調査が必要な太っている人ほど、正直に申告したくないという心理が働くのか、メニューの書き洩らしがあったりして、調査の信憑性に欠けるのです。そのため、カロリー摂取量の年齢変化に関する信頼性の高い論文は見当たらないのです。とはいえ、アウトプットとインプットの関係から、中年太りの直接的な原因は食べ過ぎにあると仮定するのは妥当であろうと考えられます。

 その他に中年太りの原因として考えられるのは、世代によって明らかに変化する運動量です。

 厚生労働省が発表している国民健康・栄養調査(2016年)によると、20代男性の1日の歩数が8583であるのに対し、30代で8127、40代で7800、50代で7478と、年をとるごとに確実に減っていきます。

 女性も20代が7418であるのに比べ、30代で6521と激減する。これは出産や育児のためと思われますが、その後の40代でも6847、50代も6854と、20代より減少しています。

 運動量が減れば、消費されないカロリーが一時的に体内に多く残り、その分、体重が増えます。

 一方で、体重が増えるとカロリー(エネルギー)の消費効率は上がります。あくまで例ではありますが、痩せている人が100歩あるいて消費するエネルギーを、太っている人は50歩で消費できるからです。重い身体を1歩動かすためのエネルギーは、軽い身体を1歩動かすそれに比べて大きい。そのため、太っている人の1歩は、痩せている人の1歩よりも多くのエネルギーを消費するわけです。

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