昔の恋人との過ちで家庭崩壊… 妻には非がないと言いながらも53歳「不倫夫」が抱える矛盾
さらに月日が流れ…
つぎに瑠美さんに会ったのは5年後。再会のとき、彼女は7歳になる男の子を連れてきた。
「ドキッとしました。自分に似ていたから」
雅仁さんはなんともいえない表情になった。そのときの衝撃を思い出しているかのようだった。
「こっそり瑠美にオレの子なのかと聞いたんです。瑠美は首をかしげて笑いました。その子と瑠美と3人で食事をしたんですが、はきはきしたいい子でね。最後まで瑠美は何も言わなかったけど、私の子なんだろうと察しはつきました。だから瑠美が帰るとき、100万円を渡したんです。何の足しにもならないだろうけどって。拒絶されました。『大丈夫、あなたには何の責任もないから』って。自分の子がいるのに何もしてやれないなんてせつないじゃないですか。『じゃあ、あの子に何か買ってやってほしい』と無理矢理押しつけました」
そして2年前のこと。東京に住む瑠美さんの妹から連絡があった。
「瑠美が亡くなった、と。そして瑠美の息子を自分が預かっていると。私は瑠美の妹さんが東京にいるなんて知らなかったからびっくりしました。それに瑠美が亡くなったこともショックで。聞けば彼女はもう10年あまりがんと闘っていたそうです。息子を出産するときすでに病気だったという。命がけで産んだ子なんだ、と妹さんは泣いていました。その後も再発しては治療をしながら、彼女は仕事をして子どもを育てていた。妹さんは何度も日本に帰ってこいと言ったらしいんですが、彼女は『帰ったらマサに甘えてしまう』と帰国を拒んだそうです」
雅仁さんの目が潤む。そこまで瑠美さんが自分を本気で愛していたと思っていなかったのだと悔しそうにつぶやいた。
「いくつになってもハイテンションで明るい瑠美に、私はついていけないと感じたこともあったんですが、そうじゃない、彼女は私の前で無理して明るく振る舞っていたんですよね。そんなことにも気づけなかった自分が悔しいやら情けないやら……」
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