昔の恋人との過ちで家庭崩壊… 妻には非がないと言いながらも53歳「不倫夫」が抱える矛盾
やっぱり地道に生きていこう
そんな雅仁さんの様子を見て、瑠美さんは「別に誘うわけじゃないけど」と口火を切った。美術関係のプロジェクトに投資しないかというのだ。寄付とは違い、成功すれば見返りがある。夢を買うようなものかもしれないが、彼女自身、そういった投資で資産を増やした経験があるというのだ。
「信頼できるかどうかわからないけど、かつて本気で愛した女性を疑うわけにはいかない。もし損をしたとしても彼女のためになるのなら……。そんな思いがわいてきました。夢をもてない私は、そういう形で彼女の夢を応援したいと思ったんです」
翌日、彼は子どもたちのために貯めていた社内預金の半額200万円をおろした。そして瑠美さんに手渡した。瑠美さんは「1年後には1・5倍にして返すから」と笑顔を見せた。瑠美さんが日本に滞在している10日ほどのあいだ、ふたりは毎日のように会って体を重ねた。やはり瑠美さんと一緒になったほうがよかったのではないかと思いながらも、自分はこういう生き方はできないとも雅仁さんは感じていたという。
「瑠美がアメリカに戻っていったとき、少しホッとしている自分がいました。テンションが高い彼女に合わせるのは若いころは楽しかったけど、もうつらいなという気持ちもあって。自分はやっぱり地道に生きていこうと思えたから、瑠美に再会したことにも意味があるとも思ったんです」
それから1年半後、瑠美さんから連絡があり、例の200万を300万円にして返すという。プロジェクトが成功したのだそうだ。内容はよくわからなかったが、雅仁さんは「瑠美が帰国したときでいいよ」と伝えた。
さらに1年半がたったころ、瑠美さんから「今日から半月ほど日本にいる」と連絡があった。会いに行くと、300万円を渡された。
「そのときの瑠美が少し疲れているように見えたんです。大丈夫かと尋ねると、『まだまだ、私は闘う人生を選んだのだから、最後まで闘うわ』って。仕事でのし上がっていこうとしているたくましさが羨ましかった」
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