昔の恋人との過ちで家庭崩壊… 妻には非がないと言いながらも53歳「不倫夫」が抱える矛盾

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職場復帰、そして瑠美さんとの再会

 3ヶ月の休職を経て雅仁さんは職場に復帰できた。仕事のシステムが少し変更になり、信頼する先輩からの助言もあって、“やる気”を取り戻した。

「先輩に言わせれば『おまえはバカ正直だ』って。仕事のやり方そのものもそうだし、人間関係もそう。誰に対しても正直でいよう、誠実でありたいと思うあまりに自分がつぶれていく。そういうタイプなんでしょう。ただ、休職を経て、自分がいなくても職場は回っていくとわかった。仕事には誠実でありたいけど、すべてに対して気を遣いすぎるのはやめようと決めました。そうしたら少し気が楽になって、逆に周りの人たちともうまくいくようになった。後輩からは『話しやすくなった』と言われてうれしかった」

 少しだけ“生まれ変わった自分”がうれしかったという。ちょうどそのころ彼は、瑠美さんが帰国していると共通の友人たちから聞いていた。

「一度みんなで会おうということになって、13年ぶりくらいに瑠美に会いました。彼女はますます素敵な女性になっていた。明るくてぶっ飛んでいるところは、年齢を経ても変わりありませんでしたが」

 みんなの前で、雅仁さんは瑠美さんから熱いキスを送られた。「私が本気で愛した人だからね」と彼女は平然と言ってのけた。

「私はひたすらドキドキしながら照れていました。彼女はアメリカで美術関係の仕事をしていると言っていました。いろいろ苦労はあったようですけど。私生活についてはほとんど話しませんでしたが、恋はしてるわよと笑っていましたね」

 翌日、瑠美さんから連絡があり、「ふたりで会いたい」と言われた。雅仁さんもそう思っていたが、自分からは言い出せなかったので、瑠美さんの言葉に飛びついた。

「指定されたのはホテルのレストランでした。その後、バーに移って飲んで。彼女の仕事の話は興味深かったですね。彼女にはもっと大きな野望があるようで、目を輝かせて夢を語る彼女がまぶしかった。私にはもう夢なんてありませんでしたから」

 そのあとさらに彼女が泊まっている部屋に行って飲んだ。飲んでいるうちに雰囲気が怪しくなり、ふたりは男女の関係を取り戻した。

「翌日が土曜日で休みだったので、家のことを忘れてのんびりしました。帰りたくなかったですね。いっそ、瑠美と一緒にアメリカに行きたいとさえ思いました。彼女は『マサがそう思うなら行動すればいいのよ。来る?』と茶目っ気たっぷりに言ったんです。彼女はどこまでも思い切りがいい。でも私はそういうことはできないタイプなんですよ。『あなたは地に足を着けて生きていくのが向いているのよ。それを誇りに思えばいいのに』と言ってくれました。そうだねと言いながらも、なんだか虚しくてね……」

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