悪気はないのに恨まれるのは辛い…妊娠した子を認知、不倫、恋人の三股「46歳独身男」がボヤく理由

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「里央さんのことを聞きました」

 ところがことは終わらなかった。数週間後、香奈恵さんからいきなり「里央さんのことを聞きました。ひどい男だね」というメッセージがやってきた。

「里央と知り合うきっかけとなった食事会を開いた学生時代の友人が、香奈恵ともつながっていたようです。それは知らなかったんですよ。そういうこともあり得ると思っていればよかったけど、そこまで頭が回らなかった」

 陽太さんは香奈恵さんに会ったが、彼女は一方的な里央さんの話を信用して彼を責めた。学生時代の仲間にはすでに陽太さんがひどいヤツだと振りまかれているという。

「僕は里央に“ひどいこと”をした記憶はありません。結婚しようと言ったこともないし、もっといえばつきあおうとすら言ってない。彼女がどんどんのめりこんできて、むしろ迷惑に近い状態だった。そう言ったら香奈恵が、『それが若い女の気持ちをもてあそんだということになるのよ』と。年上であるだけで、どうしてそんなふうに言われなければいけないのか疑問でしたね。さらに僕は夫のいる香奈恵にどうして責められなければいけないのか。そう言うと、さすがに黙ってしまいましたけど」

 自分に夫がいても、つきあう男性に恋人がいるのは許せない。「結婚と恋愛は別だからいいの」と香奈恵さんは言ったという。人間はどこまでも自分勝手なのかもしれない。

「結局、学生時代の友人たちからは総スカンで、いまだに数人を除いて会えない状態です。独身の僕の恋路に、どうしてみんながそんなに怒るのかさっぱりわからない。二股をかけられていると知った既婚の香奈恵が怒るのもわからない」

「誰に対しても本気」

 香奈恵さんとは一時期ギクシャクしたが、最近また、関係が復活したそうだ。「私一筋だと思っていたのがバカだったのよね」と彼女は言った。

「一筋じゃないから愛情がないとか、そういう話でもないんですよね。香奈恵だって、『私は夫がいるけど、あなたには本気だから』と言う。僕だって香奈恵には本気ですよ。ただ、里央にも本気だった。それはいけないことなんですかね」

 陽太さんは、自分の恋愛が人とは違うのはわかっている。だがそれほど非難されることなのかどうかわからないとため息をついた。

「芙美との間には子どもがいるから、親としての役割があり、それが信頼関係に結びつきやすい。ただ、ひとりの男と女としての関係が緊密かというと、よくわからない。それぞれに対する愛情は微妙に違うような気がするんですが、誰に対しても本気です。僕は遊びで女性とつきあったことはありません」

 客観的に見ると、好きなように生きてきた陽太さんだが、ここへ来て「社会通念と自分の行動が折り合わないことへの苦悩」にさいなまれている。自分の道を貫き通すのか、社会通念に従って生きるのか。悪気がないのに人に恨まれるのもつらい。これからどう生きればいいのかを突きつけられている気がすると彼は言った。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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