妻と不倫相手、2人に刺された男の告白 「あと10年くらいたったら結局残るのは…」

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秀夫さんが得た“悟り”

 この関係を通して秀夫さんが感じたのは、「それぞれが安定していると、婚外恋愛はうまくいく」ということだ。

 妻は揺れはしたが、夫の「しょうもない面」を受け入れると決めた。こうなれば家庭は盤石だ。留美さんが自分の人生を最優先すれば、いずれは秀夫さんから離れていく時期がくる。離れないとしても、自分の足で立てば彼のことは二の次になるだろう。

「結局、夫婦であっても恋人であっても、人との関係そのものが生きる上で人間の第一義的理由にはならないんだと悟りました。あくまでも自分は自分の生があって、その上で他人との関係が成り立っているのを実感したというか。決して冷たい意味合いではないんですが、僕自身、一心同体みたいな感覚で留美に惚れたつもりでいたけど、それは違うんですよね。そう考えると夫婦の情愛も、恋人との情熱も、どこかせつない」

 足も腕も、痛みはないが傷跡は残っている。

「あと10年くらいたったら、千里にも留美にも去られて、傷跡だけが人生だなんて言っている自分が見えますよ」

 自嘲気味につぶやいた秀夫さんだが、その頃にはまた別の女性がいる可能性もある。瑕疵がそのまま魅力に映る男性というのが世の中にはいるものだが、彼はそういうタイプなのではないだろうか。妻の千里さんは、そこに気づいているのかもしれない。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月20日掲載

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