妻と不倫相手、2人に刺された男の告白 「あと10年くらいたったら結局残るのは…」

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2人に対しての情はますます濃くなり…

「車だから、駅で転んだとも言えないし……。しかたがない、会社で転んだことにしました。転んで太ももに怪我をする状況を考え出すのが大変でしたけど(笑)、結局はシンプルに、躓いて転びそうになったので、デスクのノートパソコンを思わずつかんだらパソコンごとひっくり返り、ペーパーナイフが刺さってしまったということにしたんです。それを信じた妻は慌てて、それほど事細かにじぐざぐ8聞かれなかったのでツッコまれずにすみました」

 千里さんは彼に手を貸して家の中につれていき、ソファに座らせると冷たいお茶を出してくれた。それから数日、彼女はひたすら夫を気にかけ、身の回りのことをしてくれたそうだ。

「めったにないことなのでうれしかったですね。千里はやっぱりいい妻だなあと本人にも言いました。夫婦の心の距離がぐっと縮まった気がした。一方で、留美のことも気になっていたので、『とにかく大丈夫だから』と1日3回くらい連絡だけはしました。千里がいない時間帯に電話で話したりもして」

 1ヶ月ほどたち、毎日、出社するようになったころには足もすっかりよくなっていた。彼が真っ先に行ったのは留美さんの元だ。

 以前より、妻に対しても留美さんに対しても「情が濃くなっていったと思う」と秀夫さんは話す。昨年秋といえば、ワクチンもないままコロナ禍が長引くことが確実となったころだ。先が見えない状況では、人とのつながりだけが確かなものに思えたのかもしれない。

 ところが、

「もともと妻が嫉妬深いタイプだということを忘れていた。年末に留美との関係がバレて、今度は妻に刺されました」

また自分で病院へ

 夫の行動に不信感をいだいた千里さんは、留美さんとの関係を携帯や言動から探り当てた。深夜、寝ているところを叩き起こして携帯を突きつけてきた妻に、「勝手に携帯を見るなんて」と秀夫さんも激怒、そこから大げんかとなった。妻は寝室のテーブルの引き出しからはさみを取り出し、刃を開いた形で近距離から夫に投げつけたのだ。

「これが見事に腕に刺さりまして(笑)。実際は刺さったと思ったらぽろっと落ちたんですが、そこから血が噴き出した。ぎゅっと止血して、また自分で運転して病院へ。もちろん前とは別の病院です」

 数ヶ月の間に2度も刺されるとは。思わずクスリと笑うと、秀夫さんも「こんな男、めったにいませんよね。情けない」と恥ずかしそうにうつむいた。

 ところが不思議なのは、ふたりの女性たちとの距離が今も変わらないのだそうだ。

「千里には、留美とは別れたと言いました。留美には『きみには、この先の長い人生を自分の足でしっかり歩いていってほしい。そのための手助けはする』と言いました。彼女はまだ若いんだから、僕なんかと関わらないほうがいい。本気でそう思ったんです。でも彼女は『私がちゃんと自立できるまで、ときどき一緒にいてほしい』って。彼女の思いにつけ込んでいる面もあるとわかっていますが、僕にとってはどちらも大事な女性に違いはなくて」

 15歳になった千里さんの連れ子である娘は、つい先日、じっと秀夫さんを見つめ、「ヒデちゃんって女にモテるでしょ」と言った。飲んでいたコーヒーを吹き出した秀夫さんに、千里さんが「そうなの、疑惑はたくさんある」と笑いながら言った。

「妻はそういう方向で来るのか、と妻の覚悟を受け取りましたね。娘を通して僕をいじりながら、でも一緒にやっていこうと思ってくれていると」

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