フランスで「アジア人襲撃」を呼びかけるツイートが拡散 本当の標的は中国人?

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フランスでは「弱くておとなしい」中国人

 フランス中国青年協会(AJCF)は、「28日から始まった攻撃的なSNSの投稿の翌日に、中国出身の若者が襲われた」と明らかにしています。

 日本にいると、中国人は打たれ強いとか逞しいと思われがちですが、ヨーロッパ、少なくともフランスにおいては、そのイメージはありません。

 中国人は人種的にマイノリティー(少数派)ということもあり、犯罪や暴力事件などの被害者になることが多いのです。加えて、現金を多く持っているというイメージがあるため、スリやひったくりにも狙われやすいのです。

 私がフランスに住んで感じたのは、アジア人差別とは別で、フランス人は日頃から中国人を敬遠している節がある、ということです。

 モノが壊れると、「中国製じゃすぐ壊れても仕方ないよな」と言ったり、パリにあふれていた中国人観光客に対して眉をしかめる人もいました。

 私としては、フランス人に招かれたホームパーティーでの体験が一番印象に残っています。

 みんなで食事をしていたらビザの話題になり、「日本のビザは取りやすいのか?」ということを聞かれました。そこで、私は色々と説明していたのですが、同席していた中国人女性が「中国の制度は~」と言い始めると、あるフランス人が「ちょっと待って、中国のビザがほしい人なんかいるのか?」と冗談めかして言うのです。その場に笑いが起こり、中国人女性もふざけて怒っているような表情をしていましたが、私は笑えなかったことを今でも覚えています。

 とはいえ、中国人は今回の一件で黙っているわけではありません。AJCFは「訴えること、行動を起こすことが大事」とSNSで呼びかけています。実際に被害を訴えており、パリの検察庁も問題となっているTwitterアカウントの開示請求を行うなど、捜査を開始しているようです。

フランス人の反応

 こうしてみると、フランスでアジア人差別が蔓延しているかのように受け取られるかもしれませんが、もちろん、人種差別はいけない、と非難する人もたくさんいます。

 Le Mondeの「アジア人に対する暴力の呼びかけへの捜査開始」という11月1日の記事には、数十のコメントが書き込まれていました。

「アジア人がフランスに住むのは大歓迎だし、アジア人の安全は守られるべきだ」

「アジア人差別をするのは、ネイティブフランス人ではない」

 アジア人差別に対する批判だったり、アジア人を擁護したりというコメントばかりです。しかし、人種差別的なコメントは削除されるか掲載されない設定になっているでしょうから、必ずしも好意的なコメントの方が多いというわけではないかもしれませんが…。

 さらにこのコメント欄を読んで気になったのは、「アジア人は、被害者となっても見過ごされたり、適切な保護を受けられないことが多い」と感じているフランス人が多いということです。これまでもアジア人差別はあったけれど、問題として取り上げられることはほとんどなかったからでしょう。

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