人種で知能は違うのか?

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白人は黒人よりも賢い?

メリル・ストリープvs.ドナルド・トランプ

 1月10日、ゴールデン・グローブ賞の授賞式で、女優のメリル・ストリープがドナルド・トランプ次期大統領を批判し、それにまたトランプがツイッターで応酬した、という一件が話題になっている。ストリープはトランプの人種差別的な言動が許せなかったようだが、一方でそうした「政治的正しさ」を押し付けるような姿勢への反発が、実はトランプ人気の要因の一つである、ということはよく指摘されているところだ。

 1960年代まで公然と差別が制度化されており、そして今でもたびたび警官や市民による人種差別的な犯罪が発生している米国において、人種差別というタブーに通じるような言説は厳しい批判にさらされることが多い。

 ところが、興味深いのは、世界の科学者たちはこうした人種にまつわるタブーを怖れず、果敢に研究を進めている点である。世の中の様々なタブーに関係した「不都合な真実」について言及し、40万部を突破したベストセラー『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(橘玲・著)では、欧米の研究者による「人種と知能」についての研究を紹介している。以下、同書をもとに、人種と知能の知られざる関係性を見てみよう。

白人は黒人よりも賢い?

 1969年、アメリカの教育心理学者アーサー・ジェンセンがある論文を発表した。

 ジェンセンは知能を記憶力(レベルI)と概念理解(レベルII)に分け、レベルIの知能はすべての人種に共有されているが、レベルIIの知能は白人とアジア系が、黒人やメキシコ系(ヒスパニック)に比べて高いことを示した。

 この論文の結果は、猛烈な反発を喰らうこととなる。というのも、この5年前に黒人差別を禁じる公民権法を成立させたアメリカでは、貧困家庭の幼児に教育支援をするプログラムを進め、巨額を投じていた。

 ところが、必ずしも貧困家庭の幼児への教育は期待ほどの効果を上げていなかった。そこへきて、「人種と知能の関連」を発表したため、「黒人の子どもは遺伝的に知能が低いから幼児教育に意味がない」という主張に受け止められ、ジェンセンの研究は全米に憤激の嵐を巻き起こしたのだ。

 彼の大学にはデモ隊が押し寄せ、暗殺されかねないほどの非難を受けてしまう。

 もっとも、ジェンセンは差別をしたいがためにこのような研究をしたわけではないし、白人の人種的優位性を示したかったわけではない。

 彼は「同じような環境に置けば、白人も黒人もアジア人もみな同じような能力、知能を獲得する」という一見、正しそうな、そして当時のリベラルが信じ込んでいた「常識」を疑ってみたにすぎない。

 彼は白人と黒人のIQだけではなく、アジア系アメリカ人のIQも研究しているのだ。その結果、アジア系アメリカ人のIQは白人よりも高いことを指摘している。白人こそ最も優秀な人種であると考えている人たち(トランプ支持層にいるようにも見える)には、これもまた、不都合で残酷すぎる真実かもしれない。

デイリー新潮編集部

2017年1月13日掲載