フランスで「アジア人襲撃」を呼びかけるツイートが拡散 本当の標的は中国人?

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在フランス日本大使館からも注意喚起

 アジア人襲撃を呼びかけるメッセージの拡散に、困惑している日本人が多いのも無理はありません。

 今回の報道を受けて11月2日、日本大使館から次のような注意喚起するメールが送られています。

「新型コロナウイルスの発祥と結びつけるなどして、アジア人に対する差別的行為を呼びかけるSNSが拡散しているという報道がなされています。

 コロナ禍や連続するテロにより、フランス社会におけるストレスや不安感が全体的に増しており、先週から再開された外出制限により、人通りも減っております。犯罪に巻き込まれることのないよう、日頃より情報収集を行い、また、外出の際は身の回りの安全に十分注意して行動してください。」

 パリ在住のアナウンサー、中村江里子さんもご自身のブログで、ご主人の経営する会社のアジア人スタッフが、「口撃」を受けたことを明かしています。今回のツイッターが発端かは不明ですが、パリの地下鉄に乗っていたスタッフが、フランス人から「お前たちのせいで…」という恫喝をされたというのです。幸い怪我などはなかったそうですが、精神的なショックは計り知れません。

 今後は、アジア人スタッフがやむを得ず出勤する場合は会社負担でタクシーを使用してもらう、とも書かれていました。

 翌日のブログでも、街中で電話する時は日本語を使わないよう家族に伝えるなど、警戒されているようです。

 さらに、フランスに住む日本人が使用している掲示板サイトでも「アジア人への襲撃の呼びかけが怖いので、車で送迎してくれる人を募集」といった書き込みが見られるなど、多くの日本人が不安を感じています。

フランスでは「中国人も日本人も『アジア人』」

 アジア人にとって脅威となるSNSの書き込みは、新型コロナウイルスの感染拡大が直接的な原因です。

 実際のところ、「中国発祥のウイルスと、それを持ち込んだ中国人を許さない」というメッセージが多く、「今回のロックダウンも中国人のせいだ」というわけです。

「中国人」を名指ししているものが多いため、ならば、日本人は関係ないだろうと思われるかもしれません。

「君は日本人であって、中国人ではないから大丈夫でしょう」と言うフランス人も少なくありません。私も何人かのフランス人に同じようなことを言われました。

 しかし、見逃すことができないのは、フランスでは、今回の問題が「中国人」ではなく「アジア人」への差別として扱われていることです。

 そして、私たち在仏日本人が疑問に思うのは、「日本人だから大丈夫でしょう、というのは、裏を返せば、中国人だったら差別されても仕方がないのか」ということです。

 人種差別が起こっていること自体が問題であり、フランスに住む同じアジア人として、とても他人事とは思えません。

 そもそも、フランス人には、見た目では中国人なのか日本人なのか、別のアジアの国の人なのか区別がつかないという問題があります。外見の話を別にしても、中国と他のアジアの国の違いもハッキリ分からない人も多く、日本が中国の一部と思っている人もいます。

 冒頭でご紹介した「漫画を見るのはやめる」というツイートからも分かるように、漫画は中国の文化であると認識しているフランス人さえいます。

 ヨーロッパでは日本人が中国人に間違われること、一緒にされることも多々あります。いずれにせよ日本人も最大限に警戒する必要があるのです。

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