朝鮮半島は「2017年」に戻った 米朝の駆け引きの行きつく先は「米韓同盟消滅」

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米韓同盟は不要と考えるトランプ

――米国もそれでいいのでしょうか。

鈴置:トランプ大統領は米韓同盟が重要とは考えていません。ボルトン前補佐官も『The Room Where It Happened』でそれを強調しています。在韓米軍の撤収ぐらい、何の抵抗感もないでしょう。

 2018年6月の初の米朝首脳会談の本質も「北朝鮮の非核化」と「米国が韓国にかざす核の傘の撤去」、つまりは「米韓同盟廃棄」の取引でした。『米韓同盟消滅』の第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」で詳述した通りです。

 在韓米軍の費用分担で揉めたくらいのことでも、トランプ大統領は在韓米軍を撤収しかねません。この大統領にとって韓国に限らず、外国に駐屯する米軍はおカネだけかかる、無駄な存在なのです。

――米国の専門家は撤収に反対しませんか?

鈴置:反対する人は出るでしょうね。ただ、米国の安保専門家、ことに朝鮮半島に詳しい人が米韓同盟の将来にどんどん悲観的になっているのも事実です。韓国人の中国への異様な従属心や恐怖感を知るほどに「同盟は長くは持たない」と思い至るのです。

 その中から「どうせ消滅する同盟なのだから、存在するうちに北の非核化と交換すればよい」と考える人が出ても不思議ではありません。

 朝鮮半島を巡る動きは急で、表面を追うと目が回ります。しかし、じっくり眺めると「米韓同盟消滅」に向け地殻変動が始まっているのが分かります。日本はそれから目をそらしてはならないのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月26日掲載

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