文在寅の懲りぬ「米中二股外交」 先進国になった!と国民をおだてつつ…

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年6月8日掲載

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3代目に逮捕状

――韓国政府が米国に反旗を翻しても、米国人株主の多いサムスン電子は米国政府の言うことを聞くのでは?

鈴置:サムスン電子の3代目オーナーの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は現在、相続税を「値切る」ため株価を操作したとの疑いで捜査の対象になっています。6月4日には検察が逮捕状を請求しました。政府に歯向える状況にはありません。

――米国を怒らせて、韓国の二股外交が上手くいくのでしょうか。

鈴置:半導体のうち、メモリーに限ればサムスン電子とSKハイニックスの韓国2社で世界の約70%を生産しています。

「韓国をいじめると、メモリーの供給が世界的に不安定になるぞ」と米国を揺さぶる作戦を考えているでしょう。2019年に「日本の輸出管理強化を止めさせてくれ」と米国に訴えた際も、韓国はこのロジックを使ったことがあります。

韓国の弱点、通貨を攻める

――では、米国はどうするのでしょう。

鈴置:米国には日本製フォトレジストなどの対韓輸出を止める手があります。日本が半導体関連の3素材の対韓輸出を厳密に管理し始めたのも、米国の指示があってのことと見る専門家が多いのです。

 だからこそ、韓国は勝算の薄い日本との戦いに出た。何としてもここで半導体素材の糧道を確保しなくてはならないのです。

 米国には最終兵器があります。金融で韓国を締め上げればいいのです。韓国の弱点は外貨繰り。経常収支や貿易収支が赤字か、黒字でもその幅が急減した時にしばしば通貨危機を起こしてきました。新型肺炎で世界貿易が縮小した今も、その弱点が表面化しています。

 韓国の4月の貿易収支も経常収支も赤字を記録しました。通関統計によると5月の貿易収支は黒字でしたが、たったの4・4億ドル。

 世界経済の縮みと原油相場の回復を考えると、韓国は構造的な赤字に陥る可能性があります。そもそも少子高齢化で韓国の生産年齢人口はピークアウトし始めました。輸出の原動力である生産力がこれから落ちていくのです。

米韓スワップも罠

――でも、米国は為替スワップを結んで韓国を助けました。

鈴置:あれは罠です。「日米」スワップと異なり「米韓」には期限も上限も設定されています。3月に結びましたから9月には期限が来ます。韓国は600億ドルの枠の内、約3割の180億ドルの権利を行使済みです。

 9月にすんなりドルを返せればいいのですが、それが不可能な時は米国に頭を下げて、スワップの延長を頼まざるを得ません。その際、韓国は半導体に関する米国の要求を拒絶できるでしょうか。

 1997年の通貨危機の際、米国はIMF(国際通貨基金)の管理下に置いて韓国を操縦しました。今度はIMF経由ではなく直接、管理下に置いたのです。

 だから韓国では「日本と通貨スワップを結ぼう」との声が根強いのです。日韓スワップがあれば、通貨面での米国頼みから脱せますからね。

――日韓スワップは絶対に結んではいけませんね。

鈴置:安倍晋三政権も日韓スワップを締結したら、米韓スワップを無にすることは十分に理解していると思います。

 それと同じ文脈から、日本政府が半導体関連の対韓輸出管理を安易に緩めることはないと思います、安倍政権が世の中をちゃんと見ているのなら。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

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