文在寅の懲りぬ「米中二股外交」 先進国になった!と国民をおだてつつ…

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年6月8日掲載

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韓国政府とサムスン電子に圧力

 華為が必要とする高性能の、つまり細い線幅の半導体はまだ、中国企業では作れません。そこで、華為はサムスン電子に供給を依頼するとの観測が韓国で出ています。サムスン電子はシステム半導体分野でTSMCを追撃しています。

 少し前までなら「華為とサムスン電子はスマホ分野で世界1の座を争う。汎用品のメモリー半導体ならともかく、中核部品であるシステム半導体の供給を華為がライバルに依存するだろうか」との疑問が湧きました。

 でも結果的にですが、両社はスマホの世界市場で住み分けを始めたのです。サムスン電子は地元企業に押され、中国での生産・販売を急速に縮小しています。一方、華為は中国以外の市場で締め出しを食っています。このスマホでの地理的な住み分けが、システム半導体での両社の協力につながる可能性が出てきました。

 米国はサムスン電子と韓国政府に対し、華為いじめに加われと圧力をかけてきましたが、それに拍車をかけています。

 6月5日の韓国外交部の発表によると、イ・テホ第2次官が同日にクラック(Keith Krach)米国務次官と電話で協議し、米国が主導するEPN(Economic Prosperity Network=経済繁栄網)について説明を受けました。EPNこそは貿易取引の環から中国を排除し、西側中心の経済ネットワークを作る「中国包囲網」です。

G7に招待、懐柔するトランプ

――トランプ(Donald Trump)大統領が文在寅大統領をG7に招いたのも……。

鈴置:懐柔作戦の一環です。韓国人がのどから手が出るほど欲しがっている「先進国」の称号を与える。その代わりに中国包囲網に加われ。ことにシステム半導体を華為に売ってはいかんぞ――と言い渡す構図です。

 トランプ大統領は6月1日に韓国だけではなく、ロシア、インド、豪州も9月に米国が主宰するG7に招待しました。

 ロシアは「中国が参加しない」ことを理由にG7への招待を断りました。中国は「参加した国はひどい目にあうぞ」と威嚇しています。G7が拡大するかは様子を見た方がよさそうです。

「米中二股」を公言した韓国大使

――韓国はどう対応するのでしょか。

鈴置:両方得るつもりでしょう。G7に参加して「先進国の称号」を得るし、華為とも取引する――。

 韓国のイ・スヒョク駐米大使が6月3日、韓国メディアの特派員とのオンライン懇談会で「(米中の間で)選択を迫られる国ではなく、もはや我々が選択する国になったとの自負心を持っている」と述べました。駐米大使が堂々と「米中二股外交」を宣言したのです。

 朝鮮日報の「駐米大使がこんな発言…『韓国、米中を選択できるほどに成長』」(6月5日、韓国語版)で読めます。

 当然、米国は烈火のごとく怒りました。米政府が運営するVOAは「米国務省、『韓国はどちらの側に立つのか数十年前にすでに選んだはず』…駐米大使発言に論評」(6月6日、韓国語版)で、国務省報道官の以下の発言を報じました。

・The ROK already chose side when it abandoned authoritarianism and embraced democracy several decades ago.

「数十年前に韓国は権威主義体制ではなく民主主義の側を選んでいた」と米国の永年の同盟国であることを強調、その裏切りを責めたのです。

 VOAは「同盟国の政策に関しては『その国に聞いて欲しい』と一貫して答えてきた国務省が、ワシントンで韓国を代表する外交当局者の発言を特定し、具体的に論評を加えるのは極めて異例だ」とも報じました。「もう、同盟国待遇はしないぞ」との通告です。

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