勝新太郎の映画「顔役」はフリー・ジャズだ 現実との生身のセッションとは?

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湯浅学「役者の唄」――勝新太郎(3)

 舞台版「不知火検校」で、ヒップホップを取り入れるなど、新しい音楽に耳を傾けていたという勝新太郎。俺と一緒に悪いことを考えてくれ――この作品の再映画化を計画した勝は、湯浅学氏と根本敬氏に脚本を依頼した。

イーグルス、プリンス、イーストウッド

 原田芳雄が勝新太郎についてこんなことを言っていた。(『別冊太陽「勝新太郎」』1998年刊)

“ある時、「座頭市」をハリウッドと提携して作ろうとした時期があるんです。市が海を渡って向こうに行く話を進めていたんですよ。その当時、僕は勝さんとTVで「痛快!河内山宗俊」をやっていましてね。ある日、撮影が終わると勝さんが「原田君、今度向こうとやる『座頭市』の音楽を、昨日発見したんだ。ちょっと聴いてくれないか」って言うんですね。それで勝さんが出してきたのが、初期のイーグルスだったんですよ。「こいつらに座頭市の音楽を頼もうと思うんだけど、どうだろうってね」”

 そのとき原田が聴かされたイーグルスは「ならず者」だったのではないか、と思う。決して「テイク・イット・イージー」ではなかっただろう。

 そういえば94年ごろ、勝にプリンスから出演依頼が来たことがあった。自作品に座頭市として出て欲しいというのだ。ちょうど我々が勝と会っていたころで、ある日「プリンスってのは何だ?」と勝に訊かれたことがあった。

 もうひとつ。勝が没して10年ぐらい後だったか。千葉真一が座頭市をやる計画があり、しかも海を渡ってアメリカでガンマンと対決する西部劇にしたいといっているのだが、意見を聞かせて欲しい、と言われ俺はスタッフと会ったことがあった。座頭市が弾丸を縦にまっぷたつにするのを想像し、千葉の頭の中にクリント・イーストウッド対勝新太郎という図があるのなら、ちょっとおもしろいかもしれない、と伝えたような記憶があるのだが、メモもとっていなかったので今となっては内容も忘れてしまった。しかし千葉が仕込みで人を斬る立ち回りができるのか、大いに疑問であったのでその旨を述べると、そこはCGでなんとかするのでは、という答えだったと思う。

 どうしても座頭市が勝新太郎であることは揺るがない。

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