米国にケンカを売った「韓国」から外国人投資家が逃避 ムーディーズには怪しい動きが

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「憎まれ者」の自覚に乏しい韓国人

――でも、11月29日の韓国市場で個人投資家は買っています。

鈴置:「米国の怒り」を多くの韓国人はちゃんと認識していないのです。ワシントンでは「韓国の裏切り」が常識となった。GSOMIAだけではなく、中韓軍事協力の進展など、その証拠がどんどんあがっています(「GSOMIA維持も、米国は『韓国は今後も中国に接近』と予測 もう収まらない怒り」参照)。

 「離米従中」の国に、命の次に大事なカネを置いておく投資家はいません。というのに、韓国人は「裏切り」の自覚に乏しい。

 米国や日本と外交摩擦を引き起こしても、韓国メディアは「トランプが変わり者だから」「安倍が極右だから」と他人のせいにします。だから、韓国人は自分が「憎まれ者」になっていることに気づかず、呑気に韓国株など買っているのです。

 そのうえ、在韓米軍の駐留経費の問題が急浮上しています。韓国経済新聞のこの社説は指摘しませんでしたが、駐留経費の分担問題が米韓同盟の亀裂を広げています(「GSOMIA維持も、米国は『韓国は今後も中国に接近』と予測 もう収まらない怒り」参照)。これが資本逃避に拍車をかける可能性が高い。

米軍は出て行け

 11月25日、大統領の統一外交安保特別補佐官の文正仁(ムン・ジョンイン)氏が在韓米軍に関し「5000―6000人削減しても米韓同盟の枠組みに基本的な変化はない。そうした方が韓国政府も交渉が楽になる」と語りました。

 中央日報系のテレビ局、JTBCの番組での発言で、中央日報の「文正仁氏『在韓米軍5000人減らしても支障ない…防衛費交渉が楽に』」(11月26日、日本語版)で読めます。

 翌11月26日、左派の有力政治家、柳時敏(ユ・シミン)盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団理事長氏も「そんなに米国にカネがないなら在韓米軍の規模を縮小すればいい。象徴的に空軍だけ残し、地上軍は全て撤収すればよい」とYouTubeで語りました。

 朝鮮日報が「柳時敏、『米にカネがないなら在韓米軍を減らせばいい…空軍だけ残し、地上軍は全て撤収すればよい』」(11月27日、韓国語版)で報じています。

 米国は駐留経費の「5倍引き上げ」を要求していると報じられています。それに猛烈に反発した韓国の左派が「カネは払わない。嫌なら在韓米軍は出て行け」と声をあげ始めたのです。

 2万8500人の在韓米軍の軍人のうち、地上軍は1万8500人とされます。彼らは米国にとってはさほど必要ではない、と解説する専門家もいます。

 ただ、米韓の「売り言葉に買い言葉」により削減することになれば、米韓同盟は大きく揺らぎます。そうなれば、いや、その前に「米軍は出て行け」という言葉が韓国人から発せられるようになっただけで、外国人投資家は逃げ出します。

銀行も工場も韓国を脱出

――同盟の動揺という政治リスクが資本逃避を呼んでいる……。

鈴置:政治リスクだけではありません。少子高齢化による経済規模の縮小というリスクも顕在化しています。

 中央日報のコラムニスト、イ・チョルホ氏は「市場の復讐…『韓国経済にはもう食えるものがない(1)』」(11月13日、日本語版)で、外国の金融機関が韓国から逃げ出していると警鐘を鳴らしました。

・最近、外国資本の「韓国エクソダス(大脱出)」が目立っている。この2年間にゴールドマンサックス、バークレイズ、マッコーリー銀行などが次々とソウル支店を閉鎖して離れていった。
・かつて海外本社から低い金利に借りたドルを運用して利益を得ていたが、韓国にも低成長と低金利が定着したからだ。

 さらに、イ・チョルホ氏は「縮む韓国」からはおカネだけではなく、工場も逃げていると嘆きます。

・もう、黄金の卵を産む競争力を持った産業や企業を探すのが難しくなった。韓国企業が外国に向ける海外直接投資は今年上半期150億ドルを超えるなど連日、過去最高を更新する。一方、国内に入ってくる外国人の直接投資は100億ドル以下にとどまっている。

 自国企業でさえ逃げ出す韓国から、外国企業が逃げる――資本逃避が起きるのは当然なのです。

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