GSOMIA維持も、米国は「韓国は今後も中国に接近」と予測 もう収まらない怒り

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2019年11月26日掲載

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「米中どちらをとるのか」と踏み絵

――欧米の人々にとって、韓国の中国傾斜はニュースだったのですね。

鈴置: 日本では半ば常識化したその認識が、世界にも広がり始めたということでしょう。WPの論文も前文で「the South Korea government’ quiet leaning towards China」と「leaning(傾斜)」という単語を使っています。

――結局、「米国側に戻れ」という趣旨の論文ですか?

鈴置: さらに踏み込んで、「米中どちらをとるのか」と最終的な決断を迫った感じです。なぜならこの論文は「離米従中」を非難した後、話題を駐留経費問題に転じ、「韓国が分担金の増額に応じないと、在韓米軍を引き上げることになるぞ」と脅しているからです。

 より細かく説明すると、「韓国はGSOMIA破棄により中国側の国と認識された」→「その認識を払拭しないと同盟は崩壊するぞ」→「であるから、駐留経費の問題でも米国の言うことを聞け」というロジックです。

 これまで韓国は米国と日本に甘え続けてきた。「海洋勢力側にいてあげるのだから、これぐらいは聞いてくれ」とわがままを通してきた。

 しかし今や、米国はその手には乗らない。それどころか、GSOMIAで「同盟」を人質にした韓国の手法を逆手にとって「中国側に行きたければ行け。行くつもりがないなら言うことを聞け」と締め上げ始めたのです。

 米国の脅しには説得力があります。まず、同盟維持に関心が薄いトランプ(Donald Trump)大統領が登場したからです。この論文でも冒頭から「米中貿易戦争と韓国の中国傾斜に加え、トランプ大統領の実務的な同盟観が、予想外に早い米軍の朝鮮半島からの撤退を呼ぶぞ」とかましています。

 米軍のアジア専門家の中にも「共通の敵を失った米韓同盟はもう長くは持たない」と考える人が増えています。同盟はもう、妥協のテコにならないのです(『米韓同盟消滅』第1章第2節「『根腐れ』は20世紀末から始まっていた」参照)。

米国離れのチャンス

――「本気の脅し」が効いて、韓国は分担金問題でもGSOMIA同様、米国の命令に応じるのでしょうか。

鈴置: それは微妙です。状況が異なります。GSOMIAの「破棄」に賛成する人は5割いたものの、3割弱の人が「維持」を支持していました(「文在寅がGSOMIAで米国に“宣戦布告” 『茹でガエル』戦術から一気に米韓同盟消滅?」参照)。

 一方、分担金。米国は一気に5倍に引き上げを要求している模様です。「5倍」を呑む韓国人は保守を含め、まずいません(「文在寅のせいで米国に見捨てられる 核武装しかないと言い始めた韓国の保守派」参照)。

 韓国は「嫌なら在韓米軍を引き上げるぞ」と脅されていますが、それも逆効果になります。これまで韓国人は散々、米国から「在韓米軍撤収カード」を使われてきた。親米保守の人でさえ、この話になると不快感を隠しません。

 文在寅政権含め、反米左派は米国の強硬な姿勢を「米国離れ」のチャンスととらえるでしょう。GSOMIAに関しても、「米国の圧力で日本に屈した」と左派系紙は反米を煽りました(「韓国は米国の“お仕置き”が怖くてGSOMIA延長 今度は中朝との板挟みという自業自得」参照)。

 それに「5倍」への反発が加わるのです。分担金引き上げに反対する親北左派はすでに10月18日、ソウルの米大使公邸進入事件を起こしています(「文在寅のせいで米国に見捨てられる 核武装しかないと言い始めた韓国の保守派」参照)。

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