文在寅がGSOMIAで米国に“宣戦布告” 「茹でガエル」戦術から一気に米韓同盟消滅?

鈴置高史 半島を読む 韓国・北朝鮮 2019年11月18日掲載

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 米韓同盟がいよいよ壊れ始めた。韓国の大統領が米国の国防長官に面と向かって、日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の維持を拒否したからだ。この協定こそは韓国が海洋勢力側に属する証しである。韓国観察者の鈴置高史氏が報告する。

ついに米国に宣戦布告

鈴置: 11月16日、ソウルで開かれた保守派の集会で、韓国キリスト教総連合会会長のチョン・グァンフン牧師が「ついに文在寅(ムン・ジェイン)が米国に宣戦布告した」と演説、政権打倒を呼び掛けました。

 保守系サイト、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの動画「チョン・グァンフン、『米国に宣戦布告した文在寅、我々が処断しよう!』」(11月16日)で視聴できます。演説は韓国語ですが、英語による翻訳が付いています。

 前日の11月15日、文在寅大統領が訪韓したエスパー(Mark Esper)米国防長官に対し「日本と軍事情報を共有するのは難しい」と語ったからです。日韓GSOMIAの破棄を翻意するよう求める米政府高官に、韓国の大統領が直接、拒絶したのは初のことでした。

 大統領自ら米国防長官に拒絶した以上、韓国は後戻りできず、GSOMIAは11月23日午前零時の失効期限をもって消滅する、と保守は頭を抱えたのです。

 保守系紙の朝鮮日報も、このニュースをまったく同じ視点で――「文大統領、米国の面前で『GSOMIA』拒否」11月16日、韓国語版)との見出しで伝えています。

GSOMIAが踏み絵に

――「宣戦布告」とは大げさ過ぎませんか?

鈴置: 「日韓GSOMIAを破棄すれば、中国・北朝鮮を喜ばせるだけだ」と米国は繰り返し韓国を説得してきました。エスパー国防長官も韓国での会見でそう強調しました。

 要は、中国・北朝鮮側に立つつもりか、と米国は問うていた。GSOMIAは日韓の問題を超え、韓国の立ち位置を問う踏み絵になっていたのです。

 文在寅大統領は、その踏み絵を蹴飛ばして「中国・北朝鮮――大陸側に行く」と米国に通告したわけです。韓国の保守にすれば「米国に宣戦布告した」も同然なのです。

――米国が日本に「輸出管理の強化をやめよ」と言い出すかと思っていました。

鈴置: 「日本が対韓輸出規制を強化したからGSOMIAを破棄するのだ。規制強化を取り止めるなら破棄を撤回する」と韓国は言い出しています。そこで米国が日本に貿易面で譲歩を迫るとの観測もありました。

目に余る韓国の裏切り

――しかし米政府は日本には何も言わず、韓国にだけ圧力をかけ続けている……。

鈴置: 理由は2つあります。まず、韓国は米韓同盟をそんなに軽く見ているのか、との怒りです。米国が音頭をとって実現した、同盟の象徴たるGSOMIAを韓国はいとも簡単に破棄した。

 韓国は同盟国の米国よりも、中朝の言うことを聞いたのです。韓国は中国、北朝鮮から「GSOMIAを破棄せよ」と圧力をかけられていました。「日本の輸出規制への報復」は言い訳に過ぎません。

 GSOMIAに留まらず、韓国の裏切りは目に余るものになっていた。すきあらば、北朝鮮への経済制裁を破ってカネを送ろうとする。中国包囲網たる「インド太平洋戦略」にも加わろうとしない。

 米軍関係者は米国で「韓国への怒り(Korea angry)」が高まっていると解説します。日米分断を画策した朴槿恵(パク・クネ)政権の時代には、米国で「韓国疲れ(Korea fatigue)」が広がりました。今や、それが「怒り」に昇格したのです。

 韓国は裏切る際に汚い手口も使いました。文在寅政権はトランプ(Donald Trump)政権に「GSOMIAは破棄しない」と説明しておいて、破棄した――つまり米国をだまし討ちにしたのです。

 文在寅政権の嘘は念が入っていて、韓国民には「破棄は米国から了解を取り付けてある」と釈明していました。米政府が「破棄は事前に聞いていない」と明かしたので、すぐに嘘とばれましたが。

 もし、米国が輸出管理の強化を撤回させるなど、日本に尻ぬぐいさせれば、韓国の信義違反を認めることになってしまいます。それは裏切り者の韓国をますます増長させるだけでしょう。

 この機会をとらえて米国が「GSOMIAを続けろ」と韓国だけを締め上げるのは当然のことなのです。

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