韓国は米国の“お仕置き”が怖くてGSOMIA延長 今度は中朝との板挟みという自業自得

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 米国の顔色を見て、日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄を留保した韓国。だが、北朝鮮と中国からの圧力が高まるのは確実だ。「文在寅(ムン・ジェイン)政権は自らを袋小路に追い込んだ」と韓国観察者の鈴置高史氏は読む。

日米に屈服した文在寅

――11月22日午後6時、日韓GSOMIAの延長を韓国が発表しました。

鈴置: 青瓦台(韓国大統領府)の発表によると、骨子は2点。まず、「GSOMIAを終了したとの日本への通告の効力を停止する」――つまり、「GSOMIA延長」です。ただし「いつでもGSOMIAを終了できる」との条件付きです。

 もう1つは「WTOへの日本の提訴を中止する」。日本のフッ化水素など3品目の輸出管理強化は不当と韓国は訴えていましたが、この提訴も停止したのです。これにも「韓日両国の輸出管理に関する対話が正常的に進んでいる間は」の条件が付いています。

 このニュースを生放送で伝えたKBSの18時の番組では、アンカーと記者が困惑する様が手に取るように分かりました。韓国が完敗したと受け止められる内容だったからです。

 韓国人はさぞ、ショックだったと思われます。発表前には「韓国がGSOMIAを延長する代わりに、日本も輸出管理強化をやめる」との「相討ち」説が流されていたからでもあります。

 中央日報も「GSOMIA、最終局面で縫合…韓国は『手形』、日本は『現金』をもらった」(11月23日、韓国語版)との見出しで報じました。

 日本はGSOMIAの維持という具体的な果実を手にしたが、韓国は輸出管理に関する交渉の権利を得ただけだ、との指摘です。

 左派系紙、ハンギョレの速報記事「青瓦台、GSOMIA通知の効力停止、WTO提訴中断」(11月22日、韓国語版)のコメント欄には「GSOMIAに関し変更はないと言っていた文在寅氏はどこへ行った?」「ヤンキーと日本の奴らの圧力に屈服した」といった読者の不満が溢れました。

弁解に努めた韓国政府

――韓国人は「日本に負けた」と悔しがっているのですね。

鈴置: 韓国政府は弁解に出ました。康京和(カン・ギョンファ)外交部長官は「我々の目標である日本側の輸出規制撤回のための土台を準備した。目標が達成されるよう、輸出当局間で対話が行われる」と説明しました。

 「今後の交渉次第で輸出規制も撤回させうるのだから、完全な敗北ではない」と言い訳したのです。東亜日報の「康京和『日本の輸出規制撤回の土台を作った…いったん時間を稼いだ』」(11月22日、韓国語版)で発言を読めます。

 青瓦台の匿名の高官も「輸出規制問題を解決するため、日本との協議が進展する間はGSOMIA終了を停止する、ということ」と解説したうえで「最終的な解決は今後の日本の態度にかかっているが『停止』は相当な期間、続けるわけではない」と語っています。

 要は、「日本が輸出規制を早く解かないと、GSOMIAを破棄するぞ」と肩を怒らせてみせたのです。この発言はKBSの「青瓦台、『GSOMIA終了は条件付き延期』…WTO提訴の手続き停止」(11月22日19時13分、韓国語)が報じました。

WTOでは勝てない

――「輸出管理」を「GSOMIA」に絡めたわけですね。

鈴置: その通りです。韓国もWTOでは勝てないことが分かっている。日本から輸入したフッ化水素を直ちに再輸出するなど、明確なルール違反をしているからです(「日本に追い詰められた韓国 米国に泣きつくも『中国と手を切れ』と一喝」参照)。

 そこでWTOへの提訴は取り止めて、日本との直接協議に入る。この場で「今後は輸出管理をきちんとする」ことを日本に約束して管理強化を緩めてもらう――との作戦に転じたのです。

 ただ、輸出管理の問題だけを交渉のテーブルに乗せれば、日本側に主導権を握られてしまう。そこで、どうせ米国に叱られて維持することにしたGSOMIAを絡めて、交渉力を強化したつもりでしょう。

 だからメディアを通じ、匿名の政府高官が「GSOMIAをいつでも破棄できるカードを持っているのだぞ」と威嚇したのです。

 もっとも、日本側は脅しとは感じないでしょう。もし韓国がGSOMIAを破棄すると再び宣言したら、米国からぶん殴られますから。そもそも今回、韓国が破棄を撤回したのも、米国から脅されたからです。

 朝鮮日報も「『日本との対話』の名分得たが…自ら原則を破壊、WTO提訴を停止」(11月23日、韓国語版)で、「今年8月に韓国政府がGSOMIA終了を発表した後、米国が見せた反発を考えると、再び終了させるのは容易でない」と書いています。

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