教祖は性的虐待で逮捕、韓国の新興宗教「摂理」は日本でいまも密かに浸透中

社会2019年10月5日掲載

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今も続く大学での偽装勧誘

 摂理による大学生等への偽装勧誘は、いまだに続いているどころか、かつてより手広く巧妙になっている。ある大学の担当者がこぼす。

「かつては信者が学内に偽装サークルを作って、春先に新入生を勧誘していた。しかし06年の騒動以降、大学側の監視が厳しくなり、現在では学内サークルというはっきりした体裁をとらない。学外の社会人を招いてプレゼンの勉強や留学・キャリア支援をするサークルと称して、学内でゲリラ的に学生に声をかける。以前のようなスポーツサークルを装うこともあるが、どちらかと言うとキャリア支援を謳う『意識高い系』の装いが強くなった。有名企業に就職した社会人信者が、そういった活動に関わっている」

 ある大学では、キャンパスのすぐ近くに摂理信者が経営するカフェがあり、そこに学生を連れ込んで偽装サークルに勧誘するケースもあるという。ターゲットにされる学生の層も変わってきた。

「かつては新歓期に、ほかのサークル勧誘にまぎれて、新入生を狙う手法がオーソドックスだった。しかし現在では勧誘が通年化し、キャンパスの内外を問わず学生に声をかけるし、SNSを使った勧誘も行うようになった。キャリア支援を謳う手法では、新入生ではなく3、4年生も狙う。また高校生に対しても勧誘しており、高校時代にすでに入信した上で大学に入学してくる者いる」(前出の大学関係者)

 実際に摂理は、大学のキャンパスライフを支援するなどと称して、高校生を集めてのイベントも開催している。

 教祖・鄭明析は現在74歳。再び性的虐待を繰り返す元気はないかもしれない。

「いまのところ、かつてのような性的被害の情報はない。だったらもう問題ないのでは?という声も聞くことがあるが、宗教であることを隠して学生を勧誘している以上、大学としては看過できません。いい宗教か悪い宗教なのかという問題ではなく、学生を騙す偽装勧誘そのものが問題です」(同・大学関係者)

 偽装勧誘を行っているとの指摘に対して、キリスト教福音宣教会の広報担当者は、こう説明する。

「キリスト教福音宣教会は、当宣教会を明示してさまざまな活動をしておりますし、“偽装”勧誘はしておりません。聖書を教えている以上、宗教団体であることは明らかに分かります」

 聖書を持ち出す以前の段階の勧誘が、問題視されているのだが。

「偽装レストラン」も?

 大阪で始まった、摂理信者が経営する「実身美(サンミ)」という自然食レストランがある。現在、大阪に3店舗、東京と沖縄に各1店舗と拡張を続けている。

 今年4月8日。朝日新聞夕刊に、同店と代表者を好意的に紹介する記事が掲載され、同紙のウェブサイトでも配信された。これに対して、摂理被害者の救済に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会の東京事務局長・渡辺博弁護士が「サンミは、摂理信者らが摂理の素晴らしさを実証するために開設した店舗と認識しています」として、朝日新聞社に記事掲載の経緯を質す申し入れ書を送付。関連して渡辺弁護士は「サンミにアルバイトとして採用されてその後正体を隠されたまま摂理に勧誘された複数の方から相談を受けてきました」とのコメントも発表した。

 すると、朝日新聞社は、ウェブサイトでの記事の掲載を取りやめた。

 サンミ側は、前出の鈴木エイト氏の取材に対して「特定の宗教団体」との関係を否定、代表の大塚三紀子氏を含め従業員らに摂理信者がいるとされている点についても回答はなかった。

 摂理が多くの信者を傷つけメディアを賑わせてから13年。すでにあの騒動を忘れている人も多いかもしれない。しかしいま、その摂理が、あの手この手で勢力を伸ばしている。

藤倉善郎(ふじくら・よしろう)
ジャーナリスト。1974年生まれ。宗教団体以外も含めた「カルト」の問題を取材。2009年にはカルト問題専門のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、カルト被害、カルト2世問題、カルトと政治の関係、ニセ科学やニセ医療、自己啓発セミナーの問題などの取材を続けている。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)。

週刊新潮WEB取材班

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