教祖は性的虐待で逮捕、韓国の新興宗教「摂理」は日本でいまも密かに浸透中

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 かつて女性信者への性的暴行で教組が逮捕された韓国の新興宗教、通称「摂理」をご存知だろうか。日本でも、大学生の女性信者などが教祖のハーレムに送り込まれていたことなどから、2006年に社会問題に発展。「セックス教団」として一躍有名になった。

 その摂理、このところ耳にしなくなっている……どころか、系列の教会が宗教法人の認証まで受け、活動は勢いを増しているというのだ。ジャーナリストの藤倉善郎氏がレポートする。

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 日本では法人格を持たない任意団体として現在も活動を続ける摂理だが、昨年、系列の2つの教会が大阪府と茨城県で宗教法人の認証を受けた。さらに今後の宗教法人化を目指し申請中の教会もある。一体、何が起きているのか。

セックス教団「摂理」

 摂理は、かつて統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に在籍したこともあるとされる教組・鄭明析(チョン・ミョンソク)によって、1980年に韓国で設立された。当初は「愛天教会」と名乗り、その後「MS(モーニング・スター)宣教会」「国際クリスチャン連合」「キリスト教福音宣教会」といった調子で名称変更を繰り返してきた。85年に日本に上陸したが、表向き団体名を明示しなかったため、「MS教」「摂理」の通称が用いられてきた。

 日本では、宗教団体であることを隠し、大学でスポーツサークルなどを装って学生を勧誘。親密になってから「聖書の勉強」に誘い、宗教へと引き込んでいった。ある元信者が「もともと宗教団体に入るつもりは全くなかった。サッカーサークルだと言われ、サッカーをするために入ったのに、気がついたらそこが宗教団体だった」と語るほど、その偽装ぶりは徹底していた。

 鄭教祖が複数の女性信者たちと性的関係を持つなどしていた問題は、90年代末から韓国で指摘されており、00年代初めには日本の一部の週刊誌でも報じられた。

 99年、鄭教祖は韓国から国外に逃亡し、02年に強姦容疑等でICPO(国際刑事警察機構)から国際手配。それ以前は頻繁に来日していたが、国際手配されてからは、海外での潜伏先に日本人の信者を呼び出したりもしている。そして06年、朝日新聞が大々的に摂理問題を報じ、被害者が記者会見したことで、社会問題に発展した。

 当時、朝日新聞は、摂理の日本信者は2000人、50の大学に信者がいると報じた。「健康チェック」と称して教組に体を触れられたという元信者や、鄭教祖と同じ建物で宿泊中に乱暴されたとする元信者の証言も紹介された。

〈「選ばれた人。最高の祝福を受けた」と持ち上げられ、「教祖を裏切ったら地獄に落ちる」とも脅された〉(朝日新聞:2006年7月28日付)

 ある元信者はこう語る。

「信者からすれば、セックス教団と言われるのは抵抗も感じる。実際に多数の女性信者と性関係を持っていたのは、教祖だけですからね。一般の信者はむしろ逆で、統一教会に似た合同結婚式で結婚することが教義となっていて、それ以前は恋愛そのものが禁止されていた。教会内で付き合っている男女がいることがわかると、それぞれ別の教会(支部)の所属にさせられて別れさせられた」

 宗教ではないかのような装いで、大学生を騙して勧誘し入信させ、入信した者を新たな信者獲得のための偽装勧誘の要員として活動させる。さらに一部とはいえ、女性信者を教祖の性的虐待の対象として差し出し、一方で一般の信者には恋愛やセックスを禁じる。何とも勝手な宗教だ。

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