教祖は性的虐待で逮捕、韓国の新興宗教「摂理」は日本でいまも密かに浸透中

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カルトが宗教法人格を得られるカラクリ

 国際指名手配されていた鄭教祖は、07年に北京で拘束され、韓国へ移送。09年に懲役10年の刑が確定し、昨年2月に出所した。

 この間も摂理は活動を続けてきた。日本では「キリスト教福音宣教会」(東京・飯田橋)の名称で活動している。キリスト教福音宣教会の広報担当者はこう語る。

「虚偽の事実によって過去に『摂理』としてマスメディアに取り上げられたことがある点はそのとおりです。また、鄭明析牧師が懲役10年の刑に服したことは事実ですが、公正ではない裁判によって生み出された冤罪です」

 キリスト教福音宣教会の公式サイトには支部の一覧などはないが、同教会との関係は明示せず、全く別の名称で、全国に教会を設立している。信者数は現在、かつて「事件化」した06年よりも増え、4000人程度と見られる。

「もともと摂理は、マンションの一室を教会や共同生活の場として使い、偽装勧誘の際には、その場所をサークルの溜まり場であるかのように勧誘相手に見せていた。それが近年では、マンションやビルをまるごと買い取って、一般的な『教会』のように見える看板を掲げるケースも出てきている。06年頃に学生や若手だったコアな信者が中堅社会人になる年代なので、彼らの献金で蓄えができたのではないか」(元信者)

 昨年、宗教法人の認証を受けたのは、こうした教会のうちの2つ。「大阪主愛教会」(大阪府)と「つくば始音(しおん)教会」(茨城県)だ。2つの教会の登記謄本を見ると、いずれも「包括団体」の欄に「非宗教法人キリスト教福音宣教会」と記載されている。

 現役信者などによると、ほかにも複数が宗教法人の認証を申請中だという話もある。

「当宣教会に所属する2教会が宗教法人であることはそのとおりですが、現在、当宣教会自身を含め当宣教会に所属するその他の教会が宗教法人の認証を申請している状態にはありません」(キリスト教福音宣教会の広報担当者)

 宗教法人には、たとえば“宗派の本山”と“末寺”、あるいは“教団本部”と“支部”との関係にある「包括宗教法人」と「被包括宗教法人」、そして「単立宗教法人」がある。しかし、包括関係を結ぶ相手が法人である必要はなく、宗教団体であれば「包括団体」とすることができる。

 そのため現在、摂理の日本本部にあたるキリスト教福音宣教会が宗教法人格のないまま包括団体となり、支部にあたる2つの教会のみが宗教法人化するという形をとっている。

 都道府県にまたがって活動する宗教法人の認証は文部科学大臣が所轄し、直接の窓口は文化庁宗務課だ。一方、単独の都道府県で活動する宗教法人の認証は都道府県が所轄する。摂理の個別の教会は、都道府県認証だ。都道府県の担当者は、かつて深刻な人権侵害行為が社会問題化し、現在も大学生などを騙して勧誘している摂理であることに、気づかなかったのだろうか。

 摂理の宗教法人を認証した自治体や、現在、申請がなされているとの情報がある自治体及び文化庁に取材したが、いずれも「特定のケースについては答えられない」との回答だった。しかし、ある自治体の宗教法人認証の担当者は、匿名を条件にこう明かす。

「キリスト教福音宣教会を包括団体とする旨で申請が出されているので、当然、その包括団体がどういうものなのか調査はしている。摂理であるということも認識しているでしょう。しかし宗教法人については、認証に必要な条件に適合していれば認証しなければならないというのが現行の制度。日本国憲法で定められた信教の自由にも関わる問題なので、法律で定められていない基準を、自治体が勝手に持ち出して判断するわけにはいきません。さすがにオウム真理教(アレフやひかりの輪など)のように、いま現在も団体規制法に基づく観察処分の対象になっているようなケースであれば別かもしれないが」

 文化庁宗務課の担当者は、宗教法人の認証を「認証主義だ」と語る。許可制ではなく、法律で定められた手続きが適合していることを行政が証明するという性格の制度だ。宗教団体の活動内容に踏み込んで、問題の有無を判断するための基準や手続きは設定されていない。

「そもそも宗教法人の認証は、手続きが適合していれば下りるもの。その団体がいい団体かどうかについて、行政がお墨付きを与えるものではない」(ある自治体の担当者)

 文化庁の担当者は「申請があった団体が世間を騒がせたものであれば、当然、慎重に審査することになる」と語るが、宗教法人の認証制度やその基準は、都道府県でも文化庁でも同じだ。

 今後も摂理の支部教会の宗教法人化は続く可能性はあるし、日本の本部にあたるキリスト教福音宣教会が包括宗教法人として認証される可能性も大いにある。

単立を装う偽装教会

 宗教法人とは、その団体に問題がないことを行政が保証するものではない。建前はそうだろうが、一般的な印象は違う。素性の知れない「宗教団体」と、法人格を持った「宗教法人」とでは、信頼感は雲泥の差だ。

 大阪府で認証された摂理の教会である大阪主愛教会は、住宅街のど真ん中のマンションをまるごと買い取って教会の看板を掲げている。郵便受けの表札には「宗教法人」とも書かれている。

 しかし公式サイトには、摂理やキリスト教福音宣教会との関係は明示されていない。サイトや教会の外壁に掲げているロゴにはキリスト教福音宣教会と同じで、キリスト教福音宣教会の英語名称を示す「Christian Gospel Mission」の文字もある。しかしウェブサイト上では文字が判読できないほど小さく、教会の看板にあるロゴも凝視しなければ文字が判読できないほど小さい。

 元信者によると「このロゴのイラスト部分は鄭明析が描いたもの」とのことだが、そんなことは勧誘されて教会に来る一般の人にわかるはずもない。

 先の2教会とは別に、現在、大阪府に宗教法人の認証申請中である「主聖霊教会」に至っては、摂理のロゴすら掲示していない。建物を撮影していると、現役の信者が話しかけてきた。

「確かに私たちは摂理です。近所の方々とは上手くやっていますが、摂理だということは伝えていない。鄭明析先生は無実で、マスコミ報道はフェイクニュース。それをわざわざ自分たちから言わないでしょう」

 近隣住民に対しても、団体の素性を隠しているようだ。

 東京にある「主の帆教会」では、去る8月31日に「どなたでもご自由にご参加ください!」として、「夏まつり」を開催した。私と共にニュースサイト「やや日刊カルト新聞」でカルト関係の取材活動をしているジャーナリストの鈴木エイト氏が、その様子を取材した。

「地域イベントのような装いでしたが、実際には、来場者の大半が信者のようでした。私が会場を歩きまわっていると、スマホで何かを確認しながら私の後をつけてくる信者がいて、やがて会場内でずっと数人にマークされ、最後は『鈴木さんですね』と声をかけてきました。会場では、以前、別の摂理イベントの取材で会話した摂理幹部の姿もありました」(鈴木氏)

 主の帆教会も、看板やウェブサイトには摂理との関係を示すものを全く掲出していない。摂理との関係を尋ねた鈴木氏に対して、ある信者は「キリスト教福音宣教会という看板を制作中」と語り、摂理であることを認めた。ところが鈴木氏が別の信者に「上部団体などはない単独の教会なのか?」と尋ねると、「そうです」との答えだった。

 摂理との関係をすでにわかっている、あるいは疑っている人に対しては関係を認めるが、そうではなさそうな質問に対しては、摂理と関係がないかのようなウソをつく。この点について、キリスト教福音宣教会の広報担当者はこう説明する。

「(傘下教会を掲載していない)当宣教会のウェブサイトは、まだまだ改善の余地が大いにあり、決して十分な情報が掲載されているわけではありません。今後の改善のため、貴重なご意見として承ります。近隣住民には、教会に招待するなど様々な形で説明しており、不在でいらっしゃったがゆえにご挨拶できていない近隣住民もいらっしゃるでしょうが、明示しないわけではありません」

 元信者らの調査によると、摂理は現在、ウェブサイトを開設して存在を公表している教会だけでも15の支部が確認されている。前出の2つの教会のほかに、仙台主信仰教会、千葉愛の教会、天運教会(東京)、主真理教会(神奈川)といった調子で、摂理はおろか母体であるキリスト教福音宣教会との関係すら推測できない名称のものばかり。ウェブサイトがないものや、所在地や名称が不明のものも含めると、確認されたものだけで34にのぼるという。

 一方で、日本の本部にあたるキリスト教福音宣教会は、創設者として鄭明析の名をウェブサイトに堂々と掲載しているが、むろん鄭の素性については全く紹介していない。

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