バンギャルはなぜ「生きづらさ」を抱えがちなのか? 元バンギャルなりの考察

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「お金が必要なので風俗で働いてほしい」と言われ

 17歳のミカちゃん(仮名)も、未成年でありながらキャバクラと風俗を掛け持ちしていた。働いていた店が西川口というのも、なんだか場末感がある。ミカちゃんはよく、私にすり寄ってきていたが、別の子から「ミカちゃん、桂さんの悪口言ってましたよ。●●のライブに無理やり誘われたって」と聞いて仰天した。私は一度も、その子の言うライブに誘ったことも行ったことすらなかったからだ。おそらく、何らかの精神疾患を抱えており、虚言癖があるようだった。

 複雑な家庭で育って進学できず学歴がないため風俗しか仕事ができないアヤちゃん(仮名)は、私と同い年だった。毒親に育てられていたため、16歳で家を飛び出した。そして、親に見つけ出されないよう、役所で住民票を調べられない手続きをとっていた。アヤちゃんはソープ嬢だった。一度だけライブ以外で会って二人で飲んだことがある。そのとき、サラリーマン二人組にナンパされた。私は戸惑ってしまったが、彼女はうまいことかわし、サラリーマンが去った後「話しかけてくるなら1杯くらい奢れよ」と、ぶつぶつ文句を言っていた。今の私なら面倒なナンパをアヤちゃんのように適当にあしらえるが、当時は何もできなかった。仕事柄、彼女のほうが面倒な男共を操るテクが同年代よりも長けていたのだと思う。

 カオリちゃん(仮名)はバンギャル卒業後、単体のAV女優になった。そして、ホストに何百万も使っていた。ある日、ホストに嘘をつかれたと言って飛び降り自殺を図ったが、骨折だけで一命を取り留めた。その後、所属事務所や関係者に向けたと思われる意味深な愚痴ツイートをしてからアカウントが削除され、表舞台から姿を消した。今、どこで何をしているのかは知らないが、高級風俗店で働いていると風のうわさで聞いた。

 ユキちゃん(仮名)はバンドマンから「お金が必要なので風俗で働いてほしい」と言われ(彼には年齢を誤魔化して逆サバを読んでいた)、高校を辞めてしばらくは援助交際で食いつなぎ、18歳で正式に風俗デビュー。毎回会うたびに5万円ほど彼に渡していたようだ。しんどくないのかと問いかけたところ「彼と会う時間を買っている」とのことだった。もともとメンヘラ気味だったが、徐々にリストカットの頻度が増えていき、手首には洗濯板のような縞模様が浮き出ていた。最終的には「彼に人生を狂わされた」と言って精神病院に入院してしまった。

 親に過干渉されて苦しんでいる高校生のルイちゃん(仮名)もいた。ライブに行くことも本当は親に禁止されているため、親に嘘をついてライブに来ていることが多かった。きっと、家や学校では優等生を演じているのだろうと想像される子だった。

 思い返してみると、中高生以外は水商売や風俗で働いていた子も多い。お水や風俗はシフトの自由がききやすく短時間で稼げるので、全通(好きなバンドの全てのライブに通うこと)しやすいことも要因の一つだろう。ヴィジュアル系の歌詞には「闇」を暗示するものが多い。私を含め、彼女たちはそんな音楽と、ステージでのきらびやかなバンドマンの姿に惹かれていた。ライブハウスは生きづらい女子たちのたまり場だったとも言える。

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