バンギャルはなぜ「生きづらさ」を抱えがちなのか? 元バンギャルなりの考察

  • ブックマーク

Advertisement

THE・バンギャルだらけの結婚式

 独特な世界観で生きているバンギャルたち。数年前、バンギャルの友人がめでたくパンピと結婚した際の結婚式の二次会は異様な光景だった。新婦側は赤や緑の髪色だったり顔面にピアスをつけていたりする、見た目もパンピとは違うバンギャルばかり。新婦が好きなバンドの曲が流れると、バンギャルたちはヒートアップ。ヘッドバンギングをし、サイリウムを振って踊り狂い、デスボイスや咲き声(黄色い声でバンドマンの名前を叫ぶこと)を放ち、会場はカオス空間と化した。THE・バンギャルだらけの結婚式。

 一方、そんな新婦側の友人の姿を見た新郎側の友人たちはポカン……である。新婦を肩車してお祭り騒ぎをするバンギャルたちを目にした彼らに「あの子たちはオタクなの?」と、新婦の立会人代表のバンギャルは尋ねられたという。「オタクと言えばオタクだけど(事実、アニメオタクとバンギャルを兼業している子も多い)、オタクとはちょっと違う」と、説明に困ったとのことだった。ちなみに私はこの日、高い振り袖を着ていたため、破れたり汚したりすることを恐れ、はっちゃけられずにいたら、後日新婦から「桂ちゃん、おとなしかったね」と言われた。
 
 フリーライターとして働き始めた25歳頃から次第にライブハウスから足が遠のいた。とにかく仕事で成功したかったのと、当時バンドマンの彼氏がいたことが大きな理由だ。パンピの世界にいると、刺激は少ない。しかし、今まで自分が知らなかった世界が広がっていた。タワマンで業界の人たちとパーティー、バンギャル以外の女子との女子会、クライアントさんとの接待など、どれも初体験だった。最近は接待される側のときもあり「早く接待慣れしてよ(笑)」と言われたこともある。

 そして、バンギャル時代に抱いていた「絶対に整理番号1番を取って本命麺(一番好きなバンドマン)の前でライブを観なければ!」とか「絶対に全通しなきゃ!」という強迫的な気持ちや、ライブへ行くことが義務になって、楽しいことをしているはずなのに病むということがなくなった。

 たまに息抜きで気になるバンドを観に行くようになった途端、早い整理番号が手に入るようになって拍子抜けした。しかし今はもう、昔のように「麺に認知されたい」とか「前で観たい」とか「あわよくば繋がりたい」という気持ちがない。

 バンギャル活動に勤しんでいた頃は、暗黒時代を過ごした中高の頃と比べると、青春そのものだ。好きな麺を追いかけるのはとても楽しかった。とは言え、ちょっぴり闇はあったけれど。

姫野桂さん連載『「普通の女子」になれなかった私へ』バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年5月24日掲載

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。