男に捨てられホストクラブにもハマった31歳女子が自己肯定できた瞬間

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年齢なんてただの記号でしかない

 私は自己肯定感の低さと精神的に成人していなかったことからR氏に依存し、そしてメンタルが崩壊した。しかし、幸いにも私には理解のある友達がいた。友達に癒やしや承認を求めたこともあったが、それでも私は完全には満たされなかった。私の満足度に欠けていたのは、優しくて尊敬し合える男性からの承認だったのだと今なら分かる。私は今、依存先が分散されていたり、客観的なものの捉え方ができるようになったことから、健康的な依存の状態だと主治医に言われている。

 また、類友なのか、私の友達にもそれぞれ「孤独」を抱えている子が多い。連絡が1ヶ月もとれなくなり、最悪の場合一人暮らしの部屋で孤独死しているのではないかと心配し、彼女の職場の人に彼女が出勤しているか連絡を入れたこともあった。結果、誰とも連絡を取りたくないほどうつ状態に陥っていただけできちんと仕事には出ていて、とりあえず生きていたことに安心した。
 
 高校時代や10年ほど前は「このまま一生、目が覚めなければいいのに」と思いながらベッドに入っていた。成人してからは酩酊状態になるまでアルコールを摂取して、倒れるように眠りに落ちていた。軽いアルコール依存症だったのだと思う。
 
 しかし今は、毎晩朝が来るのが楽しみで仕方がない。朝目が覚めたらコーヒーを淹れ、マグカップ片手にベランダに出る。そして、カップを手すりに置いて両手を広げ、目を閉じて存分に朝日を浴びる。最高に気持ちが良い。このときは「私のために朝日が降り注いでくれている」と思える。そして目を開け、遠くに見えるビルや流れ行く車を5分ほど眺める。その後は部屋に戻って飼い猫の水を換え、ロボット掃除機のスイッチと洗濯機のスイッチを入れ、歯磨きをしつつメールをチェックしたり原稿に向かったり、打ち合わせや取材がある日は支度をして出かける。

 二十歳そこそこの若者からするとアラサー女性の「年齢なんて記号」という言葉は若さへの嫉妬や言い訳のように聞こえるかもしれない。恥ずかしながら私も、10代後半の頃はそう思っていた。

 でも、実際に年齢はただの記号であり、重要なのは中身の年齢なのだ。実年齢を重ねたって、いつまでも精神的に自立できずに苦しんでいたり、身近な人を傷つけている大人だっている。今後も鈴木悠平氏の言う「30代成人説」を胸に、笑顔で毎年誕生日を迎えたいし、もっともっと精神年齢の発達にも期待したい。

姫野桂さん連載『「普通の女子」になれなかった私へ』バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年3月22日掲載

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