「美人なのに自己肯定感が低い」31歳女子を形成した壮絶半生

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「毒親」が恋愛に及ぼす影響

 少し自己啓発的な怪しい言動ではあるが、鏡に向かってにっこり笑い「私は可愛い、私は綺麗、私は愛される存在に値する」と1日1回唱え続けた。少しずつではあるが、私は自分を軸に物事を考えられるようになった。それと時を同じくして、私を肯定してくれる男性も現れた。

 すると突然、ご飯が食べられるようになった。食べ物には味があることを知った。今までは粘土でも食べている感覚だったのに。1年ぶりにラーメンを完食した。ハンバーグカレーも食べた。マクドナルドのセットも食べた。すき焼きもお腹いっぱいになるまで食べた。食べることへの罪悪感も全く感じない。

 話は冒頭の故・祖母の写真の話に戻る。客観的に見ると、自分の容姿は悪くなかった。もちろん、もう31歳なので若くはない。けれど、そういう年齢の面も含めて自分を受け入れられるようになった。

 自分の生きづらさを親のせいにしているつもりはない。人から見れば「過干渉気味な毒親」と思われるかもしれないが、そう思う人がいてもいいと思う。それほど、家庭環境と恋愛は密接な関係があるのだ(恋愛に関する心理学系の本を読むとどれも、親からの愛情が欠けている部分を恋愛で埋めようとする、といったことが書かれていた)。

 久しぶりに会った某女性編集者からは「表情が明るくなったね!」と言われた。ようやく私は、愛されてもいい存在だと気づけた。
 
 しかし、つい数日前、飲み忘れや頓服のメンタルの薬の量を見て「これだけあれば致死量に至る」という発想が生まれている自分自身が怖かった。まだ死にたくない。

「死んでたまるか」は、戦時中を生き抜き(10人きょうだい中5人が戦死した)未だ存命中の御年93歳の母方の祖母の口癖だ。そう、死んでたまるか。この世に生を受けてしまったのなら、今日も人を愛し愛されて生きてやる。 

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年3月8日掲載

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