女子刑務所の「同性愛」「イジメ」「グルメ」事情 ――「組長の娘」の告白

社会2016年11月15日掲載

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■女囚たちの「大学」生活

 アメリカのB級映画や日本の成人映画で根強い人気を誇っているジャンルの1つが「女囚」モノだ。急に投獄されたヒロイン(もちろん美人)が、刑務所内でのイジメなど様々な試練に立ち向かう、というもので、そこに必ずお色気要素が散りばめられているのが定番である。
 実際の女子刑務所はどのようなものか。
 気鋭の犯罪社会学者、廣末登氏の近著『組長の娘 ヤクザの家に生まれて』には、当事者の貴重な証言が掲載されている。同書は、中川茂代さん(仮名)という女性の人生を聞き取りしたドキュメント。
 関西のヤクザの娘として生まれた中川さんは、覚醒剤譲渡・使用の罪で収監された経験を持つ。
 以下、同書から引用しながら女子刑務所内の「食事」「イジメ」「同性愛」事情について見てみよう。なお、文中に出てくる「大学」とは「刑務所」のこと、「先生」は「刑務官」のことである。

文中に出てくる「大学」とは「刑務所」のこと、「先生」は「刑務官」のことである(※写真はイメージ)

■ヨーグルト+麦飯

(1)刑務所グルメ

 ご飯は正月以外は麦飯。おかずも決してうまいものではなく「一口で言うとエサ」というレベルだったという。
 ただし、そんな環境でも彼女たちは、女性らしく知恵を絞って、「デザート」を自作していた。
 たとえば、「アンコパン」。ぜんざいとパンの食事が出ると、ぜんざいの小豆をスプーンで丹念に潰す。この即席アンコをコッペパンに塗り、さらにマーガリンをかけると「絶品やで」とのこと。
 また「即席リゾット」は、朝食に出たヨーグルト(ヤクルトのジョアなど)を麦飯の上から掛けて、仕上げにきな粉をまぶしたもの。
あまり美味そうにも思えないのだが、中川さんは「珍味やで」と語っている。
 他にも「お茶にきな粉ぶちこんで」まぜたものを「ココア」として飲んでいたという。

(2)イジメ

「大学」の中には、イジメのピラミッドが出来ていて、弱い軍団が、より弱い者をイジメることになっていた。興味深いのは、イジメの理由の一つが「不潔さ」だという点だろう。
「女やからな、イジメも細かいで。汚いことすんの、イジメの対象やな。
 たとえば、コップの口を持つ奴おったら、
『誰がそこ持つの! あんた常識ないわ』言うてな(おいおい、常識ある人間やったら、大学に来てへんやろ)。
 トイレ行って手を洗わん子もやられるわ。『マジ汚(きった)なー、あんた手洗ったん』いうてな」(同書より)
 
 閉鎖された空間だけに、他人の不潔さは余計に気になるのかもしれない。
 こうしたイジメの対象となった女性は、雑居房で暴れて懲罰を受けることも多いという。

■「ワシの女になれや」

(3)同性愛

「大学では、男役をトイチ、女役をハイチ言うんや。こいつらは、トイレの中でキスしたり、布団(ふとん)の中で『ドウキン』いうて、乳繰り合うわけや。
 もちろん、うちも誘われたわ。
 オババから
『おい、班長! ワシの女になれや』
 言われたりな。
 もちろん、
『うち、そんなんやないんやで』
 言うて、彼女か彼か知らんけど、恋心傷付けんように、丁重にお断りしたがな。
 そらな、男でも女でも、動物やからな、性欲はある。
 トイレのブラシが恋人やった女もおった」

 中川さんのしゃべりが軽妙なため、同書で描かれる「大学」生活は、思ったよりも深刻なものではない。しかし、もちろん、実際には決して楽しいものでもないし、他人に勧められるものではない。中川さんも、「入学」を深く反省している。
 そして、こうした経験をもとに、彼女は現在、カタギとして働きながら、罪を犯した人の更生のためにも尽力をしているのだ。

デイリー新潮編集部