「美人なのに自己肯定感が低い」31歳女子を形成した壮絶半生

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失恋して摂食障害再発、原稿が書けない

 そんな彼に突然彼女ができた。確かにこの関係は「僕に好きな人ができるまでね」と偉そうに言われていたが、ついにその時が来てしまった。私が積み上げてきたもの全てが崩壊した。10年前にも一度やってしまっている摂食障害をぶり返し、私の体重はみるみる間に落ちてガリガリになった。体重が軽過ぎて、ノートパソコンと一眼レフカメラを入れたリュックを背負ったまましゃがむと、後ろにひっくり返ってしまうほどだ。

「幻聴が聞こえて涙が止まらなくて頭が回らない。原稿が、書けない」

 レギュラーで記者をしている雑誌の入稿日に、キーボードの上の私の手が止まってしまった。担当編集のTさんにあらかたの事情を話した。

「何言ってんだ。お前は物書きだろ? だったら文章でやり返せ」

 そんな喝と、「時間がかかってもいいから一緒に頑張ろう」という温かい一言をくれた。Tさんの優しさに泣きながら原稿を書き、締切通りに入稿をした。

「文章でやり返せ」

 その言葉の通り、私は一層仕事に励んだ。そして、デビュー作の本を出版して4ヶ月後には2冊目の本を刊行。2冊目は発売12日目にして重版がかかった。Amazonでもすぐに在庫切れになるほど、自分で言うのもなんだが、飛ぶ鳥を落とす勢いで売れている。

 心療内科では発達障害の診断が降りた。しかし、私を生きづらくして恋愛にまで支障を与えているのは発達障害の特性そのものよりも「共依存的な考え」が私の根底にあると医師に説明された。共依存とは、親子や恋人がお互い依存し合うこと、と考えていたが、本を読んでよくよく調べてみるとちょっとニュアンスが違った。

 一言で表すと「自分よりも他人を思いやる」ということだった。

 主治医いわく、アメリカなどでは「個」を重要視するが、アジアを始めとする国は儒教の影響が強く、「親や目上の人を慕わなくてはいけない」「人に迷惑をかけてはいけない」という思いを抱く人が多く、共依存に陥りやすいという。主治医は「共依存そのものは決して悪いことではない」と、何度か強調して言った。

 でも、私の場合、共依存で生きづらくなっている。だから、自分の意思を優先する場面をもっと作っていいとのことだった。自分の意思。今まで、自分の意見を言ったり自分のやりたいことをしたりしたら、誰かに責められるのではないか、怒られるのではないか、と恐怖感を抱いて過ごしてきた。

 しかし、不思議なことに、文章だったら私は自分の言いたいことや表現したいことを自由に綴れる。もう一歩先、自分の口で言うことができたら、もっと生きやすくなるはずだ。そこから約1年かけて私は自分の「個」を発する練習を始めた。共依存や依存症に関する本を読んで自分のインナーチャイルドとも向き合った。

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