がん専門医が「がん」になって分かったこと 早期発見、人任せでなくセルフチェックを

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がんになった「がん専門医」の独白――中川恵一(2/2)

 超音波エコーで自分を見てみたら、膀胱に白い影が……。『がんの練習帳』の著者で、がん「予防」や「対策」のスポークスマンも務めてきた中川恵一氏が、自身のがんに気付いたのは昨年12月9日のことだった。がんの発見から手術、そして“体験者”ならではの警鐘を綴る体験記である。

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 手術は12月28日の朝から始まりました。担当したのは、腕のいい後輩です。やり方は尿道から太い金属の棒を膀胱まで差し込み、そこから電気メスで病巣をかき取るというものです。もっとも、麻酔をしているので何の痛みもありません。意識もはっきりしているので、モニターで手術を見ることが出来ます。担当医と話をしながら、40分で終わってしまいました。早期がんであれば、こんなに簡単なのです。

 しかし、手術が終わって麻酔が切れると下腹部に猛烈な痛みが襲ってきました。何しろ、尿道から太い棒を押し込み、電熱線のようなもので、膀胱の壁を削ってゆくのです。手術が終わってからも血尿が続き、血の塊りのようなものも出てきました。痛み止めをもらって何とか和らげましたが、わずかな血尿は今でも出ています。

 私は以前、10年ほど東大病院の「緩和ケア診療部長」という役職を兼任していました。がんによる患者さんの苦痛をなるべく和らげるのが仕事です。しかし、手術による痛みのケアまでは充分に出来たとは言えません。

「先生には、患者の気持ちは分からない」

 医師を長くやっていると、こんな事を言われる場合もあります。がん患者になって「ここが足りてなかった」と、しみじみ思いました。

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