根本治療が見えてきた「アルツハイマー」 ノーベル賞の技術が完成させた最新検査

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超音波で根治の可能性

 血液検査などで早めにリスクを把握し、発症を防ぐ――。それが今後の潮流となりそうだが、アルツハイマーや軽度認知障害(MCI)と診断されてからの治療法も日々、進歩している。中でも特に注目を集めているのは、東北大学教授の下川宏明氏が率いる研究チームが7月23日から臨床試験(治験)を開始した「超音波治療法」である。

 下川氏が言う。

「私の専門は循環器内科で、20年近く前から、音波を使った心臓病の先端治療の研究を行ってきました。01年からは低出力体外衝撃波治療というものの研究を始め、スイスのメーカーと共同で心臓病専用の衝撃波治療装置を開発。その後、心臓病に対する超音波治療の開発に着手したのですが、15年から、脳科学が専門の先生方と連携してそれを認知症治療に生かす研究も始めたのです」

 マウス実験では、脳血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症でも顕著な効果が見られたという。

「マウスの脳の特定の部分ではなく、全脳に超音波を照射したところ、脳内の血流の改善と同時に、アミロイドβの蓄積の顕著な減少が確認できました。世界で初めて、アルツハイマー病の根治療法の可能性が見えたのです」

 と、下川氏が続ける。

「アルツハイマー病のマウスだと、迷路実験ではウロウロしてゴールになかなか辿りつけないのですが、超音波治療を行うと、行き止まりを記憶し、迷わないように気を付けて短時間でゴールまで辿りつけるようになりました」

 治験は2部構成で、第1部では主に安全性の検討。第2部では有効性と安全性を検討するという。

「安全性、有効性の最終確認が出来たら、国に保険適用の申請を行う予定で、5年以内に実用化できればと考えています。今回、治験のための患者さんを募集した時に実感したのですが、最初に連絡していただいた際は大丈夫でも、自然経過で2〜3カ月で急激に進行しているケースが見られました。こうした患者さんを目の当たりにして、少しでも早くこの治療法をお届けしなければという気持ちがより強くなりました」(同)

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