根本治療が見えてきた「アルツハイマー」 ノーベル賞の技術が完成させた最新検査

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根本治療が見えてきた「アルツハイマー」(2/2)

 前項で紹介したのは、アルツハイマー型認知症が「脳の糖尿病」であるという考え方だ。インスリン作用の障害によって血糖値が上昇するのが糖尿病だが、その悪影響は脳にも及ぶ。「インスリンは記憶を司る海馬などにブドウ糖を取り込む働きがありますが、インスリンが届かなければそれが出来ず、記憶力が低下する」と、広島大学名誉教授の鬼頭昭三氏はいう。

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 ようやく発症メカニズムが分かってきたアルツハイマー。が、今も一般的な健康診断では、その「発症リスク」を知ることは出来ない。血液検査でそれを調べられれば状況は大きく変わるに違いないが、その点、8月7日に島津製作所が行った発表は極めて興味深いものだった。

「ノーベル賞を受賞した田中耕一さんらが開発した質量分析技術を使って、血中のアミロイドβ量を正確に測れる血液検査が完成したというのです。血中のアミロイドβ量からアルツハイマーの発症リスクを正確に予測できるようになれば、予防も可能になるかもしれません」(九州大学生体防御医学研究所教授の中別府雄作氏)

 京都府立医科大学教授の徳田隆彦氏は、

「アミロイドβはアルツハイマー発症の20年ほど前から沈着が始まりますので、仮に血液検査で陽性だった場合でも、そこから対策を行う時間が十分にあります。生活指導だけでも、発症のリスクを下げることが出来るはずです」

 と、話す。血液を用いたアルツハイマーのリスク診断は世界的なトレンドになっているといい、他ならぬ徳田氏もその最前線を走っている一人である。

「脳にアミロイドβが沈着するとタウというたんぱく質のリン酸化が促進され、それがアルツハイマーにつながります。私はそのリン酸化タウの重要性に着目し、血液を用いた検査の研究を進めています」

 そう語る徳田氏らの研究チームは、60代から80代の男女20人のアルツハイマー患者の血液を調べ、健常者に比べてリン酸化タウが多い傾向を確認。研究結果は昨年9月に英科学誌電子版で発表された。

「今年5月にはアメリカのメイヨークリニックが我々とは異なるメソッドで血中のリン酸化タウを測定する方法を開発しました。島津製作所の発表もあったので、18年はアルツハイマー病に対する血液バイオマーカー元年になったと言えるでしょう」(同)

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